ちょっと目を離した隙に… 3日ほど目を離した隙に詐欺メール界ではイオンに成りすますものが急増し、トレンドに躍り出てきました。 イオン銀行を名乗る者や、イオンカード、イオンクレジットなど様々なイオングループの名を騙っています。 そんな中で今回は、こちらのメールを解体してみることにします。  例によって書かれているのは、「第三者不正利用」のテンプレ。 この宛名も署名も無いこのメール、連絡先が書かれていないのでこのメールは特定電子メール法に 抵触しています。 では、このメールを解体し詳しく見ていきましょう! まずはプロパティーから見ていきましょう。 件名は 「[spam] AEON CREDIT 銀行カードは別の場所で使用されています. 1664632715」 ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。 末尾に書かれている数字は、詐欺メールでよく見られる「メール番号」と言う識別連番で、このメールに 信憑性を持たせるために付加されたものですが、これは乱数関数を使って得られる適当な数字です。 そして、この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。 このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている ものは全て迷惑メールと判断されたもの。 うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと 否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。 差出人は 「”AEON CREDIT 銀行” <card@aeon.co.jp>」 皆さんはご存じでしょうか? この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。 ですから、ここは信用できない部分です。 上手く化けたつもりしょうか?… ”aeon.co.jp”は確かに「イオン」さんのドメインですが、件名に”[spam]”とあるのでこのメールは詐欺メール故に 偽装の疑いがあります。 その辺りを含め、次の項で見ていくことにしましょう。 偽装を見破る では、このメールがフィッシング詐欺メールであることを立証していきましょうか! まず、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。 私が愛用のThunderbirdの場合、「表示(V)」⇒「メッセージのソース(O)」と進むと見られますよ。 ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。 Return-Path: 「vaxjn@aeon.co.jp」 ”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される メールアドレスです。 一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に 偽装可能なフィールドなのであてにできません。 | Message-ID:「202210012159413634768@aeon.co.jp」 ”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。 このIDは世の中に1つしかありません。 ”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。 ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。 | Received:「from aeon.co.jp (unknown [175.148.75.189])」 ”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む 自局のホスト情報です。 ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。 すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。 記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。 | この差出人は、あくまで自分のドメインは”aeon.co.jp”と言い張るようですね。 ならばその鼻っ柱をへし折ってやりましょうか! 先に書いた通り”Received”に記載のIPアドレスは差出人が利用したメールサーバーのもの。 このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法 違反となり処罰の対象とされます。 ※特定電子メール法違反 ・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金 ・法人の場合、行為者を罰する では、メールアドレスにあったドメイン”aeon.co.jp”について調べてみます。  このドメインはと「エー・シー・エス債権管理回収株式会社」さんの持ち物となっています。 この「エー・シー・エス債権管理回収株式会社」とは、イオンファイナンシャルサービスの子会社なので 実質上イオンの持ち物と言うことになります。 そして”23.10.3.74”がこのドメインを割当てているIPアドレス。 本来同じでなけれならない”Received”のIPアドレスが”175.148.75.189”ですから全く異なります。 これでアドレス偽装は確定。 この方にはしっかり罪を償っていただかなければなりませんね! 「フィールド御三家」の中で一番重要なのは”Received” これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。 ”Received”のIPアドレス”175.148.75.189”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。 このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。  IPアドレスを元にしているので、かなりアバウトな位置であることをご承知いただいた上でご覧ください。 ピンが立てられたのは、「中国 遼寧省 瀋陽市」付近です。 このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。 これってワードサラダ? では引き続き本文。 AEON CREDIT 銀行利用いただき、ありがとうございます。 このたび、ご本人様のご利用かどうかを確認させていただきたいお取引がありましたので、 誠に勝手ながら、カードのご利用を一部制限させていただき、ご連絡させていただきました。つきましては、以下へアクセスの上、カードのご利用確認にご協力をお願い致します。 お客様にはご迷惑、ご心配をお掛けし、誠に申し訳ございません。 何卒ご理解いただきたくお願い申しあげます。 ご回答をいただけない場合、カードのご利用制限が継続されることもございますので、予めご了承下さい。 [ ■ご利用確認はこちら | 本文をコピペして気付いたのですが、おかしなところに「 [ 」(かっこ)が隠されており どうやらこのメール、隠し文字が有るようです。 このメールの表示をHTML形式からTEXT形式に切換えてみると、かっこだけじゃなく 末尾に分けの分からないカタカナやひらがなとロシア語やアラビア語まで表示されました。  これはワードサラダなのでしょうか? (ワードサラダについてはこちらのページで解説していますのでご興味があればそちらをご覧ください。) このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。 そのリンクは「■ご利用確認はこちら」って書かれたところに張られていて、リンク先の URLがこちらです。  IPアドレスむき出しのURLで、尚且つ”http”から始まる暗号化されていない安全では無いサイトです。 イオンさんがそのようなサイトを利用するでしょうか?しませんよね… このサイトの危険性をトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」で確認してみます。  やはりこのように既に危険サイトと認識されており、ブラックリストに登録済み。 そのカテゴリは「フィッシング」と書かれています。 危険と言われると見に行きたくなるのが人情と言うもの。 安全な方法でリンク先の詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。 即座にChromeが接続をブロックしてきましたので、Googleでも既に危険なサイトとして登録されています。  危険を承知で先に進んでみます。 あちゃー、ちょっと遅かったようですね。 詐欺サイトの旬はとても短くて、既にトンズラした後のようです。  詐欺サイトは、捜査の手が及ぶのを恐れ、えてして時々姿をくらまします。 こうすることで少しでも捜査の手から逃れようとしているのです。 先程ご覧いただいた通り、IPアドレスとドメインは紐づけされたままなのでサイトは簡単に 復活することが可能な状態です。 まとめ どうやら今週のフィッシング詐欺メールは「イオン」がトレンドのようです。 イオンに限らず、ECサイトや信販企業からのメールには要注意です! 恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。 次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。 いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |