「SAISON CARD」の正体はUnicode逆読み偽装だった——3Dセキュア義務化から1年、なりすまし件名・本文にまでゼロ幅文字を仕込む徹底ぶり

「3Dセキュアの設定確認」を騙るメールは今も後を絶ちませんが、今回のものはヘッダーを解析してみて驚きました。文字コードのレベルで、これまで見た中でも最も手の込んだ偽装が施されていたからです。
「SAISON CARD」という表示は、実は目の錯覚ではありません。文字そのものが逆順に描画されるよう、Unicodeの制御文字が仕込まれていました。
受信画面(プレーンテキスト表示)ではこのように見えます。

▲ 一見普通の文面だが、送信者名・件名・本文それぞれに仕掛けが隠れている
■ 送信者名の偽装トリック:RLO(右から左書式)制御文字
送信者名のエンコードをデコードすると、実際に書かれている文字は次の通りでした。
[U+202E] DRAC N [U+2060] OSIAS
先頭のU+202Eは「Right-to-Left Override(RLO)」と呼ばれるUnicode制御文字で、本来はアラビア語やヘブライ語など右から左に読む言語を正しく表示するための仕組みです。これを悪用すると、続く文字列を強制的に逆向きに表示させることができ、「DRAC NOSIAS」という文字の並びが画面上では「SAISON CARD」に見えてしまいます。ファイル名の拡張子偽装などで知られてきた手口ですが、メール送信者名への応用は珍しいケースです。
💡 ここで! 用語をやさしく解説
RLO(Right-to-Left Override):文字の表示順序を強制的に右から左へ切り替えるUnicodeの制御文字です。目に見える文字ではないため、メールソフトやOSの表示上は気づきにくく、実際に書かれている文字列と画面に表示される文字列が全く逆になることがあります。「見た目のブランド名」を鵜呑みにしないことが重要です。
ゼロ幅文字によるキーワード分断:件名の「SAISON」という単語の各文字の間、さらに「確認」という単語の間にも、画面には一切表示されない特殊文字(U+200B・U+200C・U+200D・U+FEFFなど)が挿入されていました。人間が読むと普通に「SAISON」「確認」と読めてしまいますが、機械的な文字列一致でキーワードを検知するタイプのスパムフィルターには「S・A・I・S・O・N」がそれぞれ別の文字として認識され、単語として一致しなくなります。
送信インフラを見ると、攻撃者は使い捨て型とみられる一斉配信サービスを経由し、正規の認証手続き(SPF・DKIM)を通した状態でメールを送信していました。認証がPassしているからといって、内容が正規のセゾンカードであることを意味しない点は、これまでの記事でも繰り返しお伝えしている通りです。
続いて、本文中のリンクをたどると、複数のドメインを経由する構造になっていました。
■ 誘導先サイトの詳細解析(3段階リダイレクト)
①メール内の直リンク:hxxps://hklangxun[.]com/QLELn7g8/verify
②中継先:hxxps://duiadkfdvd[.]clwwq[.]com/(ウイルスバスターがここで「フィッシング」として検知)
③さらに中継:hxxps://zztyhg[.]com/LTWhyiTM/(サーバーIP:8.211.153.128/Alibaba Cloud系ホスティング/脅威レベル低)
④最終的な偽サイト:精巧に再現された「SAISON CARD」ログイン画面

▲ 1つ目のリダイレクト先で早くもウイルスバスターが検知
この警告を回避すると、次のような「安全確認中」を装う画面が挟まれます。

▲ 本物のセキュリティチェックを装った、単なる時間稼ぎ・偽装用の画面

▲ さらに次のドメインでも、再びウイルスバスターが検知
今回はウイルスバスターだけでなく、Google Chromeのセーフブラウジング機能も独立してこのサイトを危険と判定していました。

▲ 2つの独立したセキュリティ機構が、それぞれ別のタイミングで危険を検知した
すべての警告を無視して最終ページへ到達すると、本物と見分けがつかないレベルの偽ログイン画面が表示されました。

▲ デザイン・レイアウトともに本物のセゾンカード公式サイトと酷似した偽ログイン画面
ここでNetアンサーID・パスワードを入力してしまうと、そのままアカウントの不正アクセスに直結します。2つのセキュリティ製品が独立して警告を出していたという事実こそが、このサイトの危険性を何より雄弁に物語っています。
■ 注意点と対処法
- 送信者名の見た目を信用しない:特殊な制御文字によって、実際の文字列と画面表示が異なる場合があります。
- セキュリティソフトの警告は無視しない:「ブロックしたWebサイトにアクセス」を選ばず、素直に画面を閉じてください。
- 3Dセキュアの手続きはメール経由で行わない:必ず公式アプリまたはブックマークした公式サイトから確認してください。
- 不審なメールは報告・削除:返信やリンクへのアクセスはせず、迷惑メールとして処理しましょう。
本レポートの結論
今回のセゾンカードなりすましは、Unicode制御文字による送信者名の反転偽装、件名・本文へのゼロ幅文字の徹底的な注入、3段階のリダイレクトという、文字コードレベルから作り込まれた非常に手の込んだ攻撃でした。2つのセキュリティ製品がそれぞれ独立して警告した事実を、ぜひ重く受け止めてください。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで「これ気をつけて!」と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
使用配色テーマ:Burgundy















