「全日空マイレージバンク:マイル特典への引き換えについて」詐欺メール解析——ウルグアイの一般回線から同時多発、新型キットの正体

9月に入り、迷惑メールの物量が例年増えてくる時期ですが、今回はその中でも少し異質な動きがありました。ANAを騙るメールが、短時間のうちに件名を変えながら次々と届いており、この記事を書いている間にも件数が増え続けています。今回はその第一弾として、届いたメールの1通を詳しく解析します。
📋 調査レポート:概要
| 受信日時 | 2026年9月17日(木)08:13 |
| 件名 | [spam] 全日空マイレージバンク:マイル特典への引き換えについて |
| 騙られたブランド | ANA(全日本空輸)マイレージバンク |
| SPF/DKIM判定 | SPFはNone(レコード自体が存在しない)、DKIMは送信者自身のドメインへの署名のみで検証結果は不明 |
| 危険度 | ★★★★☆(4/5) |
⚠️ 波状攻撃の実態
今回のメールが届いたのとほぼ同時に、ANAを騙る件名違いのメールが次々と届き始めました。以下は記事執筆中に撮影した受信一覧ですが、この時点ですでに15通に達しています。件名は「積立の再スタート」「マイル失効前の手続き」「特典交換」「キャンペーンエントリー」など多岐にわたり、同一のキットから量産されたバリエーションとみられます。

わずか数時間の間に届いた、同一キットとみられる詐欺メールの数々(件名はすべて異なる)
対象者が限られる「積立再開・失効通知」系のメールについては、今回は単体記事にはせず、週末に届いた分をまとめて特集記事にする予定です。今回はその中から、キャンペーン性が高く、検索されやすい「マイル特典への引き換え」の1通を詳しく見ていきます。
届いたメールの内容
以下、届いたメールの本文をそのまま再現します。
「ANAマイレージバンク 会員様限定メニューの画面」 平素ANAクラブのマイレージバンクをご愛顧くださり、心より御礼を申し上げております。 また、ANAマイルに関してについては、項目;ANAの旅やお買い物の表示,本ご案内では、エンタメに活用できるお得な資産です.ぜひ以下の方法でお使いくださいませ。 また、今ならANAショッピングでキャンペーン実施中です。詳細はリンク先をご覧くださいませ。 このたび、特典チケットは、ANA国内線・国際線の特典チケットや座席の格上げに交換可能です。ANAウェブサイト(ANAのSKY WEB)またはお客さまセンターでお申し込みください。 また、ANAショッピング「A-style」でについては、つきましては、マイルを1マイルにつき10円でお支払いに利用可能です。ANAカードなら5%引き。ファッション・家電・ワインなど豊富な商品を取り扱っております。 今回,提携ポイント・ギフトについてに関しては、本提携先ポイント,なお,ギフト券に交換(予約制)です。お申し込み後、今回,およそ1週間で処理完了メールをお送りします なお、お手続きが済みますと、「マイル国内線・国際線の特典」、クラブのクラスアップグレード、「マイル払いの確認の画面」、画面「マイル提携先ポイント」、チャージ画面(会員)、今回のマイル商品券、会員向けに、残数確認がご利用可能としてお知らせしております。 今回のSKY WEB予約、換算率案内の項目、つきましては、完了通知もそのまま出ます 本内容は 2026年09月17日 時点の情報に基づきます。各種特典・交換レートは予告なく変更される場合があります。最新情報はANAウェブサイトでご確認ください. あわせまして、マイルのご利用期限は会員規約に従います.詳細はマイレージバンクにログインしてご確認くださいませ。 クラブでマイル分をお使いになる © 2026 All fzuNippon hvAirways Co., Ltd. All Rights Reserved.

実際に届いたメールの画面(HTMLメール表示)
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
読んでいて気づいた方もいるかもしれませんが、文章のところどころに「項目;」「,なお,」といった不自然な区切り記号が挟まっています。これは人間が書いた文章ではなく、テンプレートの空欄に自動で単語を差し込んで生成した際の置換ミスの跡と考えられます。文末の会社名表記も「All fzuNippon hvAirways Co., Ltd.」と、本来の「All Nippon Airways」に無意味な文字列(fzu、hv)が紛れ込んでおり、正規の表記とは明らかに異なります。コピーライト表記まで自動生成任せにした結果、ANAどころか世界のどこにも存在しない謎の航空会社が誕生してしまったようです。
送信ルートの解析
メールヘッダーの送信元情報(Received-SPF)を確認したところ、送信元IPは190.135.220.51でした。このIPを逆引きすると、ウルグアイの通信会社Antelが提供する家庭用ADSL回線であることが分かりました。つまり、専用のサーバーから送られたのではなく、乗っ取られた一般家庭のパソコンなどが送信に使われた可能性が高いということです。
| 送信元IP | 190.135.220.51 |
| 回線の性質 | ウルグアイ・ADSLダイヤルアップ回線(Antel) |
| 送信ドメイン | surveyor.marketing(ANAとは無関係の使い捨てドメイン) |
| SPF | None(レコードなし) |
| DKIM | 送信者自身のドメインへの自己署名のみ(ANA公式ドメインとの関連なし) |
メール本文内のリンクをたどると、まずhxxps://jdep2.info/4z5i3v-zi62という中継用の短いリンクに飛び、そこから自動的にhxxps://ockvv.info/snfyx426という偽サイトへ転送される仕組みになっていました。ANAの公式ドメイン(ana.co.jp)は一切経由しません。
💡ここで!
SPFとDKIMって何?
どちらも「送信元が本物かどうか」を確認する仕組みです。ただし今回のように、攻撃者が自分で用意した偽ドメインにSPFやDKIMを正しく設定してしまえば、その偽ドメインの中では「認証Pass」になります。つまり「認証がPassしている=安全」ではなく、「そのドメイン自体が本物のANAかどうか」を別途確認する必要があるということです。
リダイレクトって何?
リンクをクリックした際に、自動的に別のサイトへ転送される仕組みです。攻撃者はこれを使い、メールに書かれたリンク先(一見無関係なドメイン)から、実際の偽サイト(別のドメイン)へこっそり誘導します。
フィッシングサイト詳細解析
誘導先:hxxps://ockvv.info/snfyx426
アクセスすると、ANA公式サイトそっくりの会員ログイン画面が表示されます。ロゴやデザインは精巧にコピーされており、見た目だけで偽物と判断するのは困難です。

ANA公式サイトを模した偽のログイン画面(お客様番号・Webパスワードの入力を要求)
このサイトのホスティング先IPは165.154.241.48(Scloud Pte Ltd、東京都渋谷区)です。ただしこれはサーバーの物理的な設置場所であり、攻撃者本人の所在地を示すものではありません。海外から日本国内のホスティングサービスを借りて運用しているケースも多く、所在地だけで安全性を判断することはできません。
この記事の執筆時点で、当該サイトはまだどこからもブロックされることなく稼働しています。お客様番号やWebパスワードを絶対に入力しないでください。
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フッターの表記が壊れる手口(「fzuNippon hvAirways」のような単語の混入)は、以前解析した「【同一犯確定】ANA『スーパーVIP会員無料アップグレード』詐欺」のフッター(「liqNippon vmiAirways」)と同じ壊れ方のパターンです。送信インフラは異なりますが、同系統のキットが引き続き稼働・拡散していると考えられます。
注意点と対処法
- メール内のリンクは開かず、ANA公式アプリまたはブラウザで直接 ana.co.jp にアクセスしてご確認ください。
- お客様番号・Webパスワード・クレジットカード情報は、リンク先の画面には絶対に入力しないでください。
- 「キャンペーン」「特典交換」など、お得感を強調する件名ほど不特定多数への一斉送信である可能性が高いです。
- 同系統の件名違いメールが今後も届く可能性があります。慌てず、まずは削除をご検討ください。
ANA公式でも同様の注意喚起が出されています。詳しくはANA公式サイトの注意喚起ページもあわせてご確認ください。
まとめ
今回のメールは、ウルグアイの一般家庭回線から送信され、2段階のリダイレクトを経て精巧な偽ログイン画面へ誘導するという、手間のかかった構成でした。それでいて本文には置換ミスによる不自然な文章が残っており、「巧妙さ」と「粗さ」が同居しているのが今回のキットの特徴です。すでに件名違いのメールが多数確認されており、今後も同系統のメールが届く可能性があります。次に届いたものについては、週末に特集記事としてまとめてお伝えする予定です。心当たりのないメールが届いても、慌てずリンクを開かないようにしてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
IPアドレス調査:ip-sc.net















