「労働力調査2026」続報:7月と同一インフラで再来、送信者名を変えた波状攻撃とPC/スマホで挙動を変える新手口

7月末にご紹介した「労働力調査2026」を騙る詐欺メール、実はあの記事は終わりではありませんでした。同じ裏方インフラを使い回した新しい波が届いています。
■ メールヘッダー解析(送信者情報)
件名:[spam] 【要回答】労働力調査2026(8月調査)のご協力のお願いNo.95084285-602027638)
送信者表示名:“労働力調査事務局” <info@soumu.go.jp>(詐称)
送信元アドレス(実際のドメイン):dgboyang.com
受信日時:2026年8月10日 09:46
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
今回はこれだけでなく、同じ日のうちに送信者名を「国勢調査オンライン」<info@soumu.go.jp>に変えた、ほぼ同一内容のメールも届いていることを確認しています。7月30日の記事でご紹介した「同日中に名乗りを変える波状攻撃」のパターンが、今回も再現されています。
総務省統計局が個別にメールで統計調査への回答を催促したり、回答特典としてQUOカードPayを進呈したりすることはありません。ご覧の通り、このメールは総務省を装った真っ赤な偽物です。この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです。リンクは無効化して掲載しています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 総務省統計局 労働力調査事務局 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ お客様各位 平素より政府統計調査へのご協力を賜り、誠にありがとうございます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 2026年8月調査のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このたび、2026年度第3四半期(8月調査)の労働力調査が開始されました。 本調査は、日本の雇用・失業状況を把握するための最も重要な基幹統計調査です。調査結果は、厚生労働省による年金制度の見直しや、ハローワークにおける再就職支援給付金の算定基礎として活用されます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 回答いただいた方へのプレゼント ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 期間内にご回答いただいた方の中から、先着3,000名様に、全国のコンビニや書店、飲食店でご利用いただける「QUOカードPay 500円分」をプレゼントいたします! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 回答期限:2026年8月16日(日)23:59まで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ 回答ページはこちら https://www.soumu.go.jp/online/(表示のみ・実際の遷移先は別ドメイン)

実際に届いたメールの画面。7月の記事と本文の骨格が共通している
■ 送信ルート及び偽装判定
Received-SPF解析:
Received-SPF: Pass; client-ip=20.48.34.188; helo=dgboyang.com
SPFは通過(Pass)していますが、これは「dgboyang.com」という総務省とは無関係な、攻撃者が用意したドメイン自体の認証が通っているだけです。さらにメールヘッダーには「d=soumu.go.jp」というDKIM署名情報(送信元がメール本文を改ざんしていないことを証明する電子署名)まで含まれていましたが、これも攻撃者が自作した見せかけの情報にすぎず、総務省の正規の署名鍵によるものではありません。
発信元ロケーション解析:
IPアドレス 20.48.34.188 は、Microsoft Corporation(Microsoft Azure)が保有する回線で、所在地は東京都渋谷区でした。
■ フィッシングサイト詳細解析:7月と同一インフラを確認
本文中のリンクは、見た目こそ総務省公式URLですが、実際の誘導先を調べたところ、7月30日の記事で解析した詐欺サイトと全く同じ2つのIPアドレスが使われていました。
| 段階 | 7月30日記事 | 今回 |
| 第一段階IP | 43.163.207.119 | 43.163.207.119(同一) |
| 最終段階IP | 43.155.174.59(韓国・Tencent Cloud) | 43.155.174.59(同一) |
ドメイン名や件名、報酬内容(前回:セブン-イレブン500円クーポン/今回:QUOカードPay 500円分)は変えていても、裏で使っているサーバーの実体はそのままということです。詐欺グループにとって、表向きの見た目を変えるコストは低く、インフラの使い回しでコストを抑えている実態がうかがえます。
誘導の流れ:本文のリンクをクリックすると、まず「盾のアイコンを選んでください」という疑似的なセキュリティ確認(自動検知ツールを回避するための時間稼ぎ)画面が表示されます。

自動検知ツールの調査を避けるための「人間確認」画面
■ PCとスマホで挙動が異なる新しい仕掛け(クローキング)を確認
この確認画面を突破した後の動きが、アクセスする機器によって明確に変わることを確認しました。
| アクセス機器 | 実際の挙動 |
| パソコン | 読み込み中を示すインジケーターが回り続けたまま、いつまで経ってもページが表示されない |
| スマートフォン | Google Chromeが「危険なサイト」として警告。突破すると、総務省の実在キャンペーンを精巧に模倣した「労働力調査 かんたんガイド」という偽ページが表示される |
パソコンで調査すると「単に壊れているサイト」にしか見えないよう仕向け、実際の被害者となりうるスマートフォン利用者にだけ手の込んだ偽ページを見せる——巧妙な作り分けです。デザインの完成度は高く、公式サイトのキャラクターイラストや配色までよく似せてありますが、URLは総務省公式の「soumu.go.jp」とは全く異なります。

パソコンでアクセスすると、読み込み中の表示のまま先へ進まない

スマートフォンでは、Chrome自体が危険なサイトとして警告する

警告を無視して進むと表示される、公式キャンペーンを精巧に模倣した偽ページ
■ 前回記事との関連について
当サイトでは2026年7月30日にも「労働力調査2026」を騙る詐欺メールを解析しています。その記事でも同日中に送信者名を変えた波状攻撃が確認されていましたが、今回も「労働力調査事務局」「国勢調査オンライン」という2つの名乗りで、同じQUOカードPayを餌にしたメールが届いていることを確認しました。バックエンドのサーバーインフラが完全に同一である点からも、同じ詐欺グループが継続的にこの手口を運用していると考えられます。
■ 注意点と対処法
- 統計調査をメールで催促されたら疑う:総務省統計局を含む公的機関が、個別にメールで回答を催促したり、特典を進呈したりすることはありません。
- セキュリティソフト・ブラウザの警告は絶対に無視しない:「危険なサイト」の警告が出た時点でアクセスを中止してください。
- パソコンで「異常なし」に見えても油断しない:機器によって表示が変わる作りになっています。
- 公式サイトから直接確認:気になる場合は、検索エンジンやブックマークから総務省統計局の公式サイトに直接アクセスして確認してください。
本レポートの結論
件名や特典内容を変えながら、裏方のサーバーは7月からそのまま使い回す——詐欺グループの「省力運用」の実態が、2つのIPアドレスの一致からはっきりと見えてきました。パソコンとスマホで挙動を変える巧妙さも侮れません。身近な人が油断してからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで「これ気をつけて!」と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net














