自社ドメインを騙る「個人情報流出に関する緊急のお知らせ」は詐欺——南アフリカの住宅回線から届き、偽Windows Defender画面でサポート詐欺に誘導

今回は、当ラボが管理しているドメイン自体が名乗られるという、いつもとは少し違う立場からの解析です。「うちのドメインを騙る詐欺メールを、うちで解析する」という構図になりました。
■ メールヘッダー解析(送信者情報)
件名:[spam]【重要】お客様の個人情報流出に関する緊急のお知らせとお詫び
差出人:support@(自社ドメインを詐称)
送信元IP:41.132.17.49(GeoLite2:南アフリカ、ホスト名は住宅用光回線を示すftth.web.africa)
SPF:Softfail(自社ドメイン自身のSPFレコードが「この送信元は推奨しない」と明確に判定)
受信日時:2026年9月7日 10:56
※メールヘッダー詳細・宛先アドレスは個人情報保護のため非掲載
宛先のローカルパートも、本日確認したKAGOYA案件と同様、実在するかどうか分からないランダムな文字列でした。ドメイン単位で辞書的に大量送信する攻撃の一環と考えられます。
ご覧の通り、このメールは自社を装った真っ赤な偽物です。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです(ドメイン名は伏字にしています)。
(伏字)をご利用のお客様へ この度、弊社が管理するサーバーに対し外部からの不正アクセスが確認され、お客様の個人情報が外部へ流出した可能性があることが判明いたしました。 多大なるご迷惑とご心配をおかけしますことを、深くお詫び申し上げます。 流出した可能性がある情報: ・氏名、ご住所、電話番号 ・メールアドレスおよびログインパスワード ・クレジットカード情報の一部 現在、二次被害(不正利用やアカウントの乗っ取り)を防ぐため、システム側で一時的にアカウントを制限しております。 お客様ご自身で直ちにパスワードの再設定と本人確認を行っていただく必要がございます。 以下の特設ページより、至急お手続きを完了させてください。 ▼ 個人情報保護・アカウント復旧専用ページ ※本手続きを本日中に行っていただけない場合、お客様の資産保護のため、アカウントを完全に削除せざるを得ない場合がございます。 ※すでに身に覚えのない請求が来ている場合は、速やかに上記ページより被害報告を行ってください。 お客様にはお手数をおかけしますが、迅速な対応をお願い申し上げます。 ────────────────── (伏字)セキュリティ管理センター 公式サポート: (伏字) ──────────────────
実際に届いたメールの表示画面(ドメイン名は伏字加工しています)
メールソースをテキスト形式で確認したところ、本文中に見た目には表れないゼロ幅文字が複数箇所に挿入されていることを確認しました。本日確認した楽天・三井住友カードを騙るメールと同様、迷惑メールフィルターの機械的なキーワード検知を回避するための加工と考えられます。
■ 送信ルート及び偽装判定
【偽装判定:確定】
自社からの正規の連絡が、南アフリカの住宅用光回線(41.132.17.49)から送信されることはありません。SPFがSoftfail(ドメイン所有者自身が「この送信元は推奨しない」と判定)となっていることからも、Fromヘッダーの偽装が技術的に確認できます。送信者・署名欄のすべてにわたって自社ドメインが盗用されており、受信者に「社内・自社からの正規メール」と誤認させる高度な偽装工作です。
💡ここで!「テクニカルサポート詐欺」って何?
テクニカルサポート詐欺とは、パソコンの画面に偽の警告(「ウイルスに感染しました」「情報が漏洩しました」など)を表示し、記載された電話番号に電話をかけさせる詐欺です。電話をかけると、片言の日本語や外国語を話すオペレーターが遠隔操作ソフトのインストールを求めたり、高額な「修理費用」「セキュリティ対策費用」の支払いを要求したりします。今回のように国際電話番号(0101から始まる番号)が使われている場合、電話をかけただけで高額な通話料金が発生する点にも注意が必要です。
■ フィッシングサイト詳細解析
誘導先URL:hxxps://suyatisen.z11.web.core.windows.net/9nzjtq2o3/
このドメインはMicrosoft Azureの静的ウェブホスティング(Azure Static Web Apps)の無料枠を悪用して作られたページです。本物のMicrosoftドメインのサブドメインとして表示されるため、セキュリティフィルターをすり抜けやすいという特徴があります。
このURLはすでにGoogle Chrome(セーフブラウジング)とウイルスバスターの両方で「危険なサイト」として検出・ブロック済みでした。
Chromeのセーフブラウジング機能がフィッシングサイトとして検出、アクセスをブロック
セキュリティソフトも「安全ではない可能性がある」と警告し、既にブロック対象になっている
「悪意のあるトロイの木馬プログラムを検出」と称する偽警告画面。記載の電話番号には絶対に電話しないこと
この「Azure Static Web Apps+偽Windows保護センター+0101番号への誘導」という組み合わせは、当ブログが以前報じた自社ドメイン詐称の別事例(人事労務部を騙る通勤交通費詐欺)とも共通する手口の系譜です。電話番号自体は毎回異なるものが使われていますが、キットの骨格は使い回されていると見られます。
■ 注意点と対処法
- メール内のリンクは絶対にクリックしない:自社ドメインに見えるアドレスから届いても、油断しないでください。
- 偽の警告画面が出たら電話しない:「トロイの木馬を検出」等の警告と電話番号が表示されても、絶対に電話しないでください。
- 画面を閉じられない場合:「Ctrl」+「Alt」+「Delete」でタスクマネージャーを起動し、ブラウザを強制終了してください。
- 万が一電話・遠隔操作を許可してしまった場合:直ちにインターネット接続を切断し、クレジットカード会社・金融機関・警察のサイバー犯罪相談窓口に連絡してください。
- 公式の注意喚起も参照:IPA(情報処理推進機構)「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)」対策特集ページ/警察庁「サイバー犯罪対策」
本レポートの結論
自社ドメインを完全に詐称し、「個人情報流出のお詫び」を口実に、Azureの無料ホスティングを悪用した偽Windows Defender画面から国際電話でのサポート詐欺に誘導する手口でした。送信元は南アフリカの住宅用回線で、SPF認証からも偽装は確定しています。ゼロ幅文字による本文加工も見られ、フィルター回避への工夫も怠っていません。身近な人が騙されてからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで『これ気をつけて!』と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
使用配色テーマ:Forest














