【要確認】「国勢調査 回答期限のご案内」は総務省統計局を装う詐欺メール|偽アプリ(APK)をインストールさせる手口

「そういえば、国勢調査って、もう回答したっけ…?」。ふと、そんな不安がよぎったことはありませんか。
今日のお昼前から、まさにその不安につけ込むメールが、立て続けに届きました。結論から言うと、総務省統計局を装った詐欺メール です。ボタンは押さずに、削除してください。当サイトの迷惑メール一覧には、約50分で約170通も並びました。どこがおかしいのか、順番に見ていきます。
HEARTLAND-LAB ANALYSIS
📋 概要
| 届いた日時 | 2026年11月2日(月)正午前後(約50分間に、約170通) |
| 件名 | 【要確認】国勢調査 回答期限のご案内(ほか3種類) |
| 名乗り先 | 「総務省統計局」「国勢調査」を装う |
| 送信元 | 米国のクラウド(IP:20.64.206.92) |
| リンク先 | パソコンでは「スマホでQRコードを読んで」という画面、スマホでは「Google Play」そっくりの偽ページ(不正アプリを入れさせる) |
| 危険度 | ★★★★★ (スマホに不正アプリを入れられ、情報や口座を狙われるおそれ) |
| 結論 | 「回答義務がある」と焦らせて、偽のアプリ配布ページから不正アプリ(APK)をインストールさせる詐欺 とみられます。ボタンは押さないでください。 |
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
🚨 このメールは総務省統計局からのものではありません(偽物です)
本文のボタンは押さず、削除してください。
届いたメールの内容
届いたうちの1通の、メールの画面に表示される内容を、書き起こしました。
件名:【要確認】国勢調査 回答期限のご案内 送信者:総務省統計局(表示のみ) 添付ファイル:YebW9Xq4.chqmp [総務省統計局のロゴ画像] 【居住者の皆様へ】国勢調査はお済みですか? スマホで1回!わずか5分で完了します。 外国人住民の方も回答の対象です。 【簡単回答の手順】 📌 既にアプリをお持ちの方は、アプリを起動し、メッセージボックスよりお手続きください。 📌 アプリをお持ちでない方は、お早めにインストールをお願いいたします。 [Android版 総務省統計局アプリ] 📌 画面の指示通りに入力して完了! ⚠️ 国勢調査は統計法により【回答義務】があります。 ※正当な理由のない拒否や虚偽回答には、最高50万円の罰金が科される場合があります(統計法第61条)。 ※回答データが警察・入管・税務署等に渡ることは一切ありません。 回答期限:11月30日(月)まで
▲ 実際に届いたメールの画面
「回答義務」「最高50万円の罰金」「期限は11月30日」と、不安をあおる言葉が並んでいます。一方で、「警察・入管・税務署等に渡ることは一切ありません」と、聞かれてもいないことを、先回りして否定しています。本当に心配のない調査なら、わざわざ書く必要のない一文です。
ボタンの行き先は hxxps://ntmly[.]com/web/link/elxa でした。総務省とは関係のないドメインです。また、メールには、拡張子が見慣れない .chqmp の添付ファイルが付いていましたが、当サイトでは開封・解析していません。皆さんも、開かないでください。
約50分で約170通。件名は4種類
今回の特徴は、その数です。11時40分ごろから12時30分ごろまでの約50分間に、同じような件名のメールが、約170通届きました。1分あたり、3〜4通のペースです。件名と差出人の表示名は、次の4種類で、組み合わせは決まっています。
| 件名 | 差出人の表示名 |
| 【要確認】今すぐ5分で完了させる国勢調査の義務 | 国勢調査 |
| 【重要なお知らせ】地域住民全員に課された国勢調査の法的義務 | 【国勢調査】 |
| 【重要】国勢調査ご協力のお願い – 直ちにスマホで終わらせる国勢調査 | 【総務省統計局】 |
| 【要確認】国勢調査 回答期限のご案内 | 総務省統計局 |
実際の件名は、文字の間に空白や見えない文字が挟まれていますが、上の表は、読みやすく整えて書いています。メールの見た目は4種類で異なりますが、当サイトの確認では、どれも不正アプリのインストールへ誘導するもので、狙いは同じでした。上の「届いたメールの内容」は、4番目の件名の1通です。
実際の迷惑メール一覧を、時間順に並べました。同じ名前が、ずらりと並んでいます。

▲ 迷惑メール一覧(11時39分〜11時51分)

▲ 迷惑メール一覧(11時52分〜12時05分)。このあたりから、迷惑メールの印が付き始めました

▲ 迷惑メール一覧(12時06分〜12時11分)

▲ 迷惑メール一覧(12時11分〜12時20分)

▲ 迷惑メール一覧(12時20分〜12時29分)
なお、一覧の全部の行に、クリップのマーク(添付ファイルの印)が付いています。
本物の総務省は、何と言っているか
総務省は、「総務省統計局をかたった不審メール」についての注意喚起を、公式サイトに載せています。この件名「国勢調査 回答期限のご案内」も、2026年6月25日の分として載っていて、「現在、国勢調査は実施していません」とあります。国勢調査は5年に1度の調査で、直近は2025年です。
さらに、同じページには、2026年6月2日の分として、「総務省統計局アプリ」をダウンロードさせる不審メールも載っていて、「総務省統計局アプリは実在しません」と書かれています。統計局がメールのリンクから直接回答を求める調査は、存在せず、「決して回答を行わないよう」注意を呼びかけています。
公式の注意喚起は、こちらです:総務省|総務省統計局をかたった不審メールの注意喚起
つまり、今回のメールは、すでに公式に「偽物」と告知されている手口の、再来です。
送信ルートと偽装判定
| 表示名 | 「総務省統計局」と表示(実は、逆さまの文字を使った細工。詳しくは次の項目) |
| 差出人のドメイン | send.ntmly[.]com(総務省とは無関係) |
| 送信元IP | 20.64.206.92(米国・ワシントン州、Microsoftのクラウド) |
| SPF | pass(ただし、攻撃者自身が用意したドメインでの合格です) |
| DKIM | 署名は付いているが、検証結果の記録がなく確認できず |
| 送信側が記録した接続元 | 日本の大学のサーバーを思わせる名前の行があり、その実際のIPは、37.226.185.33(イタリア・ミラノ、携帯電話の回線)でした |
| メールソフトの名乗り | 「iPhone Mail」と名乗っていた(実際は、サーバーから送信されている) |
| 判定 | 総務省統計局を装った偽メール |
「接続元」と「メールソフトの名乗り」の行は、メールを送った側のサーバーが自分で書き残した記録です。攻撃者が用意したものなので、偽の可能性もあります。参考情報として見てください。
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
詳しく調べると…「総務省統計局」の文字が、逆さまだった
差出人の表示名には、目に見えない細工がありました。見つけ方は、次のとおりです。表示名を1文字ずつ文字コード(コンピューターが文字に付けている番号)に分解して調べると、「文字の並ぶ向きを右から左に切り替える」特別な制御文字が、混ざっていました。テキストエディタに貼り付けて、制御文字を表示させても、同じものを確認できます。
この表示名は、実際には「局計統省務総」と、逆さまの順番で 入っています。そこに向きを逆にする制御文字を付けると、画面では、正しい向きの「総務省統計局」に見えます。「総務省」などの言葉を探す迷惑メールフィルターを、すり抜けるための細工 とみられます。
| 場所 | 見えない細工 |
| 差出人の表示名 | 向きを変える制御文字が4個、幅のない文字が1個 |
| 件名 | 幅のない文字が4個(加えて、「要 確 認」と、文字の間に空白) |
| メールの本文 | 幅のない文字などが、約250個 |
こうした細工は、人の目には見えないため、画面を見ただけでは、気づけません。だからこそ、見た目ではなく、「今、その調査が本当に行われているのか」という、中身で判断することが大切です。
💡 用語解説
- 幅のない文字(ゼロ幅文字):画面では何も見えない、目に見えない文字です。言葉の途中に入れると、人の目には普通の言葉でも、機械には別の文字列に見えます。
- 向きを変える制御文字:文字を並べる向きを、右から左へ切り替える特別な文字です。アラビア語など、右から書く言葉のために、本来は用意されています。
- APK(エーピーケー):Androidスマホ用のアプリの「ファイル」です。本来は Google Play を通して入れますが、ファイルを直接入れることもできます。その手口が悪用されます。
- 不明なアプリのインストール:Google Play以外から入れたアプリを、許可するかどうかのスマホの設定です。ここを許可してしまうと、不正アプリも入るようになります。
- クローキング:見る人の機器(パソコンかスマホか)などによって、見せる画面を変える手口です。調べる人には何も出さず、狙った相手にだけ偽ページを見せます。
- SPF:メールの送信元IPが、ドメインの持ち主が認めた場所かを確かめる仕組みです。攻撃者が自分のドメインで設定すれば、合格します。
- DKIM:メールに付ける電子的な署名です。署名があっても、それだけで本物とは言えません。
リンク先を調べると…パソコンとスマホで、見える画面が違う
メールのボタンの行き先を、安全な環境で、パソコンとスマホの両方から確認しました。同じボタンなのに、行き着く先は、まったく違いました(クローキング)。
① パソコンの場合:ブロックされ、QRコードの画面へ
パソコンで開くと、ウイルスバスターが、2回続けてブロックしました。どちらも「フィッシング」の判定です。1回目は、shewailvsh-jp[.]com です。

▲ 1回目のブロック(フィッシング)
2回目は、deaccessori-jp[.]com です。

▲ 2回目のブロック(フィッシング)
セキュリティソフトが、2回も止めてくれたわけです。ここで止まるのが、正しい反応です。そのまま進めてみると、最後に、次の画面が表示されました。

▲ 「パソコンからは利用できません。スマートフォンでQRコードを読み取って」という画面
総務省統計局のロゴを使って、「システムメンテナンスのため、パソコンからはご利用いただけません」「スマートフォンで以下のQRコードをスキャンしてください」と書かれています。パソコンで見ている人を、スマホへ乗り換えさせるための画面です。画面の下には、「総務省」の法人番号まで書き込まれていて、本物らしく見せています。この番号は、公表されている総務省の法人番号と一致します。公開されている番号を、そのまま写しただけです。
なお、QRコードは、読み取っていません。QRコードは、中身が目で見えないため、危険なリンクを隠すのに使われやすい ので、見知らぬ画面のQRコードは、読み取らないでください。
② スマホの場合:ブロックされず、偽のGoogle Playページへ
スマホで開くと、shewailvsh-jp[.]com のページに、ブロックされることなく着きました。パソコンで、ブロックされたのと同じドメインです。

▲ スマホで表示された、Google Playそっくりの偽ページ(アドレスは shewailvsh-jp[.]com)
「総務省統計局」のアプリ名、「4.8★」「100万+ ダウンロード」、緑色の「インストール」ボタンまで、Google Playのアプリ紹介ページにそっくりです。下には、「アプリを更新」「接続内容を確認」「インストールを許可」という、手順のようなスクリーンショットが並んでいて、3つ目では、「権限を許可」をオンにするように、赤い矢印で誘導しています。画像の中には、nnt-live-snap.apk という、アプリのファイル名らしき文字も読み取れます。
ちなみに、このページの対象年齢は「3歳以上」だそうです。「回答義務」を説く統計局のアプリが、3歳のお子さんにまで、スマホで回答させるつもりのようです。
この偽ページは、補助金ポータルを装う詐欺メールの記事に出てきたものと、そっくり同じ作りです。手順の画像も、ファイル名らしき文字も、「スマホでQRコードを読んで」というPC向けの画面も、看板だけを付け替えて、使い回されています。「不明なアプリのインストールを許可」する操作を案内してくる時点で、不正アプリの配布と見て間違いありません。
なお、当サイトでは、不正アプリのファイルは入手しておらず、中身を調べてはいません。どんな悪さをするアプリかは、分かりません。ただ、この手のアプリは、一般的に、スマホの画面や入力内容、SMSなどを盗み見て、ネットバンキングなどの口座情報を狙うものが多いとされています。同じ手口の、e-Tax(国税庁)を装うメールについては、こちらの記事で詳しく書いています。
ドメインとサーバーの調査
| 対象 | サーバーのIPと場所 | 分かったこと |
ntmly[.]com(差出人のドメインと、ボタンの最初の行き先) | 43.167.33.11(シンガポール) | Tencent Cloud(Aceville Pte.)のサーバー。ここから、別のドメインへ転送される |
shewailvsh-jp[.]com(スマホの偽Google Playページ) | 34.97.104.133(日本・大阪) | Googleのクラウド上 |
deaccessori-jp[.]com(パソコンのQRコード画面) | 34.97.104.133(上と同じ) | 上のドメインと、同じIPで動いている |
注目は、スマホ用とパソコン用の2つのドメインが、同じIP・同じサーバー で動いている点です。サーバー側で、見る人の機器を見分けて、画面を出し分けているものとみられます。また、最初の転送元の ntmly[.]com は、補助金ポータルの記事で、ドメインの登録会社として出てきた「Aceville Pte.」と、同じ名前の会社の、Tencent系のサーバーでした。これらのドメインの取得日などの登録情報は、確認できていません。上の「場所」は、サーバーの置き場所を示すだけで、詐欺を行っている人の居場所とは限りません。
注意点と対処法
- 国勢調査は、メールのボタンでは回答しない。 総務省は、メールのリンクから直接回答を求める調査はなく、現在は国勢調査も実施していない、と告知しています。気になるときは、総務省統計局の公式サイトで、ご自分で確認してください(上の「公式の注意喚起」も参考に)。
- アプリは、Google Playの中で自分で探す。 メールのリンクや、見知らぬ画面から入れるのはやめましょう。Androidの設定で、「不明なアプリのインストール」が、オフになっていることも、確かめておくと安心です。
- 見知らぬ画面のQRコードは、読み取らない。 「パソコンは使えない、スマホで読んで」と言われたら、いったん手を止めてください。
- もし入れてしまったら、落ち着いて、まずスマホの通信を切ってください(機内モード)。そのスマホで、銀行やカードのアプリを使うのはやめましょう。暗証番号や、パスワードを、そのスマホの外から変更する ことが急ぎです。別の機器から、銀行やカード会社へ連絡し、利用状況を確認してください。そのうえで、アプリを削除し、携帯電話会社や、ご家族の力も借りて、スマホの初期化も検討しましょう。困ったときは、消費者ホットライン「188」や、警察の相談専用電話「#9110」にも、相談できます。
- メールは、迷惑メールとして報告し、削除する。 添付ファイルは、開かないでください。だまされそうになった方を責める必要は、まったくありません。「回答義務がある」「罰金がある」と言われれば、誰でも慌てます。気づけたこと自体が、大きな一歩です。ご家族、特にご高齢の方にも、教えてあげてくださいね。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
IP情報の参照:IP調査兵団(ip-sc.net)











