社長・役員になりすまし「LINEグループ作成→QRコード送付」を要求するニセ社長詐欺メール、実際の回収先は香港ホスティング

今日はご紹介する詐欺メールが少なめでしたが、代わりに少し毛色の違う一通が届きました。ブランドを騙るタイプではなく、社内の「社長」や「上司」になりすまして従業員に直接語りかけてくるタイプの詐欺です。
| 緊急性レベル | ★★★★☆ (4/5) |
| 偽装工作精度 | ★★★☆☆ (3/5) |
| 受信日時 | 2026年8月3日 |
実在する会社の社長・役員を騙り、「業務連絡をLINEに統一するのでQRコードを返信してください」と持ちかける、いわゆる「ニセ社長詐欺」の一種です。件名には実在する取引先企業名が使われていましたが、本記事では該当企業への配慮から伏せ字にしています。※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載です。
⚠️ このメールは実在の社長・役員本人からの連絡ではありません。詐欺メールです。
それでは、実際に届いたメールの内容から見ていきましょう。
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです(差出人・宛先の会社名は伏せています)。
件名:株式会社○□▽工業 お疲れ様です。 今後は業務連絡をLINEにて行います。 お手数ですが、ご自身のLINE QRコードを本メールへ返信してください。 確認でき次第、順次追加いたします。 よろしくお願いいたします。 ============================================ 株式会社 ○□▽工業
実際に受信した詐欺メールの画面。差出人表示名は日本語の偽名だった
■ 送信ルートおよび偽装判定
送信元アドレス:
Outlook(Microsoftのフリーメールサービス)の実在するアカウントが使われていました。表示名だけを日本語の偽名に設定し、あたかも社内の人間のように見せかけています。
SPF:Pass(Microsoftの正規送信基盤から送られたことを示しているだけで、差出人が本物の社長・役員であることの証明にはなりません。Outlookは誰でも無料でアカウントを作成できるサービスです)
SPFがPassしていても、フリーメールサービスの正規基盤を経由しているだけで、送信者本人の身元とは無関係です。今回のように、実在の大手サービスのアカウントを使うことで、セキュリティフィルターや「送信元がちゃんとしているから大丈夫」という思い込みをすり抜けようとする典型的な手口です。
BEC(Business E-mail Compromise:ビジネスメール詐欺)とは、取引先や社内の役職者になりすましたメールを送り、金銭や機密情報をだまし取る詐欺の総称です。中でも社長や役員を名乗り「LINEグループを作成してQRコードを送れ」と要求するパターンは、2025年末頃から国内で急増しており、LINE公式や複数の金融機関が注意喚起を行っています。
典型的な流れは、①メールでLINEグループの作成とQRコードの返信を要求→②送られたQRコードから攻撃者がグループに参加→③「取引先への振込」や「口座残高のスクリーンショット」を要求→④実際の送金へ誘導、という段階を踏みます。メールの時点では金銭のやり取りは発生しないため、「変だな」と思いつつもつい応じてしまうのが怖いところです。
■ 返信先(Reply-To)の解析
Reply-To(返信先)に設定されたアドレス:
送信元のOutlookアドレスとは別の、独自ドメインが指定されていました。ドメイン名には「jp」の文字列が含まれているものの、日本とは無関係のドメインです。
回線情報(ip-sc.net確認):
プロバイダ:Cloudie Limited/AS55933(CLOUDIE-AS-AP)/組織名:Rainbow Network Limited/利用形式:hosting
所在地:香港 九龍 旺角
つまり、メール自体はMicrosoftの正規サービスを経由して送られてきますが、実際に「LINE QRコードを返信してください」の返信ボタンを押すと、香港のホスティング業者が管理するアドレスに届く仕組みになっていました。「送信元」と「実際の回収先」が別物であるという構造は、詐欺メール全般に共通する重要な見分けポイントです。
■ 注意点と対処法
- 「社長」「役員」名義で業務連絡先の変更やLINEグループ作成を求めるメールが届いたら、メールへの返信ではなく、電話や対面など別の手段で本人に必ず確認してください。
- 個人のLINE QRコードを不特定の相手に送ることは避けてください。一度送ってしまうと、そのアカウントを起点に別の詐欺グループへ勧誘されるおそれもあります。
- LINEグループに招待された後、「口座残高のスクリーンショットを送って」「取引先へ至急振り込んで」といった要求が来たら、その時点で間違いなく詐欺です。すぐにやり取りを中止してください。
- 社内でこの手口を共有し、「メールだけで完結する送金・機密情報の指示は、まず疑う」というルールを周知しておくことが有効です。
社内の誰が受け取ってもおかしくない手口です。この記事のURLをコピーして、職場の同僚やご家族のLINEグループで「これ気をつけて!」と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
配色テーマ:Burgundy















