またしても便乗詐欺が 以前に2度ほど税務署を騙って同じタイトルのメールをご紹介していますが、少し時間が経ったのと 新しいものが届いたので、気を引き締めるつもりで改めてご紹介しておこうと思います。 そのメールがこちらです。 ここで言う『国税還付金』とは、支払い過ぎた税金があった場合に税務署から還付される金額で 還付金が発生した場合は受け取れるものです。 国税庁は、この国税還付金振込通知書の電子発行を令和5年6月19日よりe-Taxで開始したようですが どうやらこのメールはそれに便乗した悪質な詐欺メールではないかと思われます。 では、このメールを解体し詳しく見ていきましょう! まずはプロパティーから見ていきましょう。 件名は『[spam] 税務署からのお知らせ【宛名の登録確認及び秘密の質問等の登録に関するお知らせ】』 ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。 この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。 このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている ものは全て迷惑メールと判断されたもの。 うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと 否応なしに『迷惑メール』フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。 差出人は 『”e-Tax(国税電子申告・納税システム)” <succ@ccbjbze.cn>』 皆さんはご存じでしょうか? この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。 ですから、ここは信用できない部分です。 国税に関する内容なのでこのメールの送信者は『国税庁』であるはずです。 もしこのメールが本当に国税庁からのものだとすると、メールアドレスのドメイン部分は 国から国税庁に与えられた”nta.go.jp”となるはずです。 でも、このメールの場合はなぜだか”ccbjbze.cn”なんて全く異なるものが使われており 更にはこの”.cn”は中国を表す国別ドメインです。 国の機関である国税庁が、中国のドメインを使ったメールアドレスで国民にメールを送る行為 あなたはどう思いますか?(^^;) 国税庁が中国ドメインで香港設置のメールサーバーから国民にメールを?! では、このメールが悪意のあるメールであることを立証していきましょうか! まず、このメールのヘッダーソースにある”Received”を確認し調査してみます。 私が愛用のThunderbirdの場合、『表示(V)』⇒『メッセージのソース(O)』と進むと見られますよ。 ここに掲げた”Received”はこのメールが差出人から送信された後最初に通過したサーバーのもので すなわち差出人が使った送信サーバーの自局情報です。 末尾の4つに区切られた数字の集まりはIPアドレスと呼ばれるいわばインターネット上の住所や電話番号で 同じ数字の集まりは世界中に1つしかありません。 でもこの数字の集まりじゃあまりにも煩雑でわかりにくいので、それに文字を割り当て分かり易くした ものがドメインと呼ばれるものです。 このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法 違反となり処罰の対象とされます。 ※特定電子メール法違反 ・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金 ・法人の場合、行為者を罰する では、メールアドレスにあったドメイン”ccbjbze.cn”が差出人本人のものなのかどうかを 調べてみます。 これがドメイン”ccbjbze.cn”を割当てているIPアドレスの情報です。 これによると”107.148.140.58”がこのドメインを割当てているIPアドレス。 もちろん国税庁からのメールではありませんが”Received”のIPアドレスと全く同じ数字なので このメールアドレスは差出人さんご本人さんのもので間違いなさそうです。 ”Received”に記載されているIPアドレスは、差出人が利用したメールサーバーの情報で これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。 このIPアドレスを元に送信に使われた回線情報とその割り当て地を確認してみます。 地図に立てられたピンの位置は、香港の『柴湾』辺りです。 そして送信に利用されたのは、アメリカカリフォルニア州に拠点を置く『Peg Tech Inc』と言う プロバイダーです。 このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。 国税庁が中国のドメインを使い、香港に設置されたメールサーバーを介して国民にメールを送る… バカバカしい… 国税庁の偽サイトはロサンゼルスに では引き続き本文。 ※直リンク防止のためURLの一部の文字を変更してあります。 ここまで読んでいただければ何を書かれようがもう全く信用できませんよね?(笑) 当然このメールは詐欺メールですから詐欺サイトへのリンクが付けられています。 そのリンクは本文内に直接URLが記載されていますね。 ”nta.go.jp”と国税庁の公式ドメインが利用されているようにも見えますが、このURLでのドメイン部分は そこではなくて”gcsjhqr.cn”で、またしても中国の国熱ドメインで構成されていますね。 そのリンク先のURLとトレンドマイクロの『サイトセーフティーセンター』での 危険度評価がこちらです。 あらら、残念ながらまだ評価の対象にされていないようで『未評価』とされています。 このURLで使われているドメインは”gcsjhqr.cn” このドメインにまつわる情報を取得してみます。 やはり中国の方が申請しているドメインのようです。 次にIPアドレス。 このドメインを割当てているIPアドレスは”204.44.93.167” このIPアドレスを元にサイト運営に利用されているホスティングサービスとその割り当て地を確認してみます。 地図に立てられたピンの位置は、ロサンゼルス近郊。 利用されているホスティングサービスは、アメリカに拠点を置く『QuadraNet Enterprises LLC』 この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようですね。 まとめ これらの調査から、どうやらe-Taxによる国税還付金振込に便乗した中国人グループによる 詐欺メールであることが確認できました。 国の機関まで巻き込んだ詐欺行為、誰がどのように対処したらよいのでしょうか? 個人個人が気を付けるしかないのでしょうか? 困った世の中になったものですね…(-_-;) 恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。 次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。 いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |