「所得税還付金の振込完了のお知らせ」は国税庁の詐欺メール|偽e-Taxアプリをスマホにだけ表示する手口

「還付金が振り込まれました」と言われたら、つい口座の残高を見たくなりますよね。その気持ちにつけ込んだメールが、今朝(10月21日)早い時間に届きました。国税庁を名乗る「所得税還付金の振込完了のお知らせ」です。落ち着いて、一緒に中身を見ていきましょう。
HEARTLAND-LAB SECURITY REPORT
「【要確認】所得税還付金の振込完了のお知らせ」
国税庁を装った詐欺メール。「アプリをダウンロード」のボタンの先は、パソコンとスマホで表示が切り替わる仕掛けでした
結論:これは詐欺メールです。「Android版 e-Tax アプリをダウンロード」のボタンは押さないでください。押すと、偽のアプリ配布画面にたどり着き、スマホに不正なアプリを入れさせられるおそれがあります。
| 危険度 | ★★★★☆(高い) スマホに不正なアプリを入れさせ、情報を抜き取る入口になるおそれがあるため |
| 受信日 | 2026年10月21日(水)午前8時09分ごろ |
| 件名 | 【要確認】所得税還付金の振込完了のお知らせ |
| 差出人 | 表示名は「国税庁」。実際のアドレスは FromE-Tax@idle[.]blddt[.]com(国税庁とは無関係のドメイン) |
| 送信元IP | 20.168.48.177(アメリカ・アリゾナ州。大手IT企業のクラウド型サーバー) |
| SPF / DKIM | SPFは合格(攻撃者が用意したドメインで通っただけ) / DKIMは署名が付いているが、検証結果は未確認 |
| 誘導先 | hxxps://blddt[.]com/column/drhg(ここから端末ごとに別のサイトへ振り分け) |
| 誘導先のIP | 103.145.190.169(中国・上海。振り分け役のサーバー)振り分け先は 34.97.152.185(日本・大阪にあるクラウド上のサーバー) |
⚠ これは国税庁からのメールではありません。偽物(詐欺メール)です。
届いたメールの中身
本物そっくりの緑と青の見出しで、「所得税の還付金を振り込みました」と伝える文面です。肝心の金額や振込日は書かれておらず、「安全のためメールには書かない。アプリで確認して」という理由でアプリのダウンロードへ進ませる作りでした。
件名:【要確認】所得税還付金の振込完了のお知らせ 差出人:国税庁 添付:cpH4l.pjyv 【要確認】 所得税の還付金をご指定口座にお振り込みいたしました お早めにe-Taxアプリからログインのうえ、ご確認ください。 このメールの要点 還付金のお振込が完了いたしました。振込金額等の詳細はメッセージボックスにてご確認いただけます。 平素よりe-Taxをご利用いただき、誠にありがとうございます。国税庁でございます。 還付申告に基づく所得税の還付金を、ご登録の金融機関口座へお振り込みいたしました。振込金額や処理日時などの詳細は、メッセージボックスに格納しております「国税還付金振込通知書」にて必ずご確認ください。 セキュリティ保護の観点から、還付金額や振込日は本メールには記載しておりません。 必ずメッセージボックス内の振込通知書にてご確認ください。 ご確認のお願い ・入金が確認できない場合、ご登録の口座情報に誤りがある可能性がございます。お早めにご確認ください。 ・e-Taxへは、e-Taxアプリからのアクセスをお願いいたします。 今後ともe-Taxをよろしくお願い申し上げます。 e-Taxアプリのご利用について 既にアプリをお持ちの方は、アプリを起動し、メッセージボックスよりお手続きください。 ※ アプリをお持ちでない方は、お早めにインストールをお願いいたします。 [ Android版 e-Tax アプリをダウンロード ] 国税庁 e-Tax(国税電子申告・納税システム) ※本メールは送信専用アドレスから配信しています。ご返信いただいてもお答えいたしかねます。 ※配信の停止は、e-Taxの「利用者情報の登録・確認・変更」画面から行えます。

▲ 実際に届いたメールの画面
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
メールには cpH4l.pjyv という名前のファイルも付いていました。見慣れない拡張子で、中身も意味のない文字の並びに見えたため、当サイトでは開封・解析していません。
送信ルートと偽装の判定
メールの送信元を調べると、20.168.48.177 という、アメリカ・アリゾナ州にある大手IT企業のクラウド型サーバーから送られていました。誰でも借りられるサーバーなので、攻撃者はそれを使ってメールを出したと考えられます。このIPの名前の引き方(逆引き)は idle.blddt.com で、国税庁とは関係のない名前でした。
「送信元の確認(SPF)は合格」と出ていますが、これは攻撃者が自分で用意したドメインの設定で通っただけです。国税庁が出したという証明ではありません。リンク先も同じ blddt.com で、2025年11月に取得されたばかりのドメインでした。
本物の案内とも食い違います。国税庁の注意喚起ページには、e-Taxからのメールは決まった形式で、ファイルの添付や本文へのURL記載は原則ないと書かれています。このメールは、添付もリンクもありました。また、フィッシング対策協議会は2026年9月30日の時点で、国税庁のスマートフォン用e-Taxアプリは提供されておらず、アプリを名乗るものは不審だと注意喚起しています。
💡ここで! 「クローキング」ってなに?
同じリンクなのに、開く人の機器や環境によって、見せるページを切り替える仕組みです。このメールでは「パソコンで開くとA、スマホで開くとB」と出し分けています。調べる側や検索ロボットには無害なページを見せ、本当に狙いたい人(スマホの利用者)にだけ危険なページを見せるのが狙いです。
詳しく調べると分かったこと①:見えない文字だらけのメール
画面で見ると普通の文面ですが、メールの元データを調べると、目に見えない文字がたくさん埋め込まれていました。見つけ方は簡単です。メールの元データ(ソース)を、テキストエディタなど文字コードを確認できるツールに貼り付け、1文字ずつ文字コードに書き出して数えました。普段は見えない文字も、「U+200B」のようなコードとして表示されます。
- 差出人の名前:実際には「庁税国」と逆の順番で保存されていて、文字の向きを変える特別な文字(U+202E)を前に付けて、画面では「国税庁」と読めるようにしていました。
- 件名:「【 要 確 認 】」の文字の間に空白を入れ、「所得税」「お知らせ」の途中にも見えない文字を挟んでいました。
- 本文:幅のない見えない文字(ゼロ幅文字)が、HTML版だけで約420個。文章の合間にまんべんなく散らばっていました。
- そのほか:フッターの「e-Tax」のハイフンも、見た目は同じでも別の文字(U+2011)でした。
こうした細工の狙いは、迷惑メールを見つける仕組み(キーワード検知)を、すり抜けることだと考えられます。それだけ手をかけたのに、振り分け先のひとつは調べた時点ですでに閉じていました。せっかくの仕込みも、足元がお留守だったようです。
詳しく調べると分かったこと②:端末で表示が変わる偽アプリ配布サイト
フィッシングサイト詳細解析
入口:メールのボタンのリンク先は hxxps://blddt[.]com/column/drhg。IPは 103.145.190.169(中国・上海のホスティング事業者)で、ここが「どこへ飛ばすか」を決める役目をしていました。
パソコンで開いた場合:hxxps://tendclothin-jp[.]com/ に振り分けられます(QRコードでスマホへ誘導する作り)。2026年10月9日に取得されたドメインで、当サイトで確認した時点では「このサイトにアクセスできません」と表示され、すでに止められていました。
スマホで開いた場合:hxxps://bestpartneha-jp[.]com/ に振り分けられ、アプリストア風の偽ページが表示されました。このドメインは10月17日に取得されたばかり(3日前)です。
共通点:2つのドメインは、登録事業者もDNSの設定も、置かれているサーバー 34.97.152.185 も同じでした。日本・大阪のクラウド上にあり、攻撃者が日本にいるという意味ではありません。同じサーバーには126件のサイトがあり、IP調査サイトにも13件の警告コメントが付いています。

▲ パソコン側の誘導先。確認した時点ではすでにアクセスできない状態でした

▲ スマホ側に出る偽のアプリストア風ページ。「4.8」「50万+ダウンロード」の数字も、本物らしく見せるための作り物です
スマホの画面は、緑の「インストール」ボタンと高評価の数字で、公式アプリのように見せていました。下には3つの手順画像が並び、「更新をクリック」「OKボタンをクリック(VPN接続の許可)」「この提供元のアプリを許可」と順番に進めるよう案内しています。
この手順で求められる設定は、本来は許可してはいけないものです。「この提供元のアプリを許可」は、公式ストア以外から来た素性の分からないアプリを入れる許可にあたります。さらにVPN接続の許可まで進めると、スマホの通信を覗き見される心配もあります。なお、当サイトでは実際のアプリ(ファイル)を入手しておらず、中身は解析していません。そのため、アプリの正体は断定できません。
届いたときの対処法
- メールのボタンは押さず、そのまま削除してください。添付ファイルも開かなくて大丈夫です。
- 還付金が気になるときは、メールのリンクではなく、ふだん使っているブックマークや公式の入り口からe-Taxにログインして確認してください。
- もしボタンを押して、ページを開いただけなら、慌てずにページを閉じてください。何かを入力していなければ、それだけで大丈夫です。
- 「インストール」や「提供元のアプリを許可」まで進めてしまった場合は、早めにそのアプリを削除し、スマホの設定で「提供元不明のアプリ」の許可をオフに戻してください。念のため、銀行やカード会社のアプリのパスワードを、別の端末から変更しておくと安心です。
- 不安なときは、警察の相談窓口(#9110)や、消費者ホットライン(188)にご相談ください。誰にでも起こりうることですので、ひとりで抱え込まないでください。
公式の情報は、こちらもあわせてご覧ください。
まとめ
「所得税還付金の振込完了のお知らせ」は、国税庁を装った詐欺メールです。金額を書かずに「アプリで確認を」と誘い、パソコンとスマホで表示を切り替えて、スマホに偽のアプリを入れさせようとします。
「お金が振り込まれた」と聞くと、誰でも気になります。そんなときこそ、メールのボタンではなく、ご自分で開く公式の入り口から確認してくださいね。周りのご家族やご友人にも、ぜひ教えてあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
IP情報の参照:IP調査兵団(ip-sc.net)










