【iCloud「次回請求についてのお知らせ」は詐欺メール】テキスト表示で“別のメール”が出てきた

HL-META: date=2026-08-31 | brand=iCloud | sender_geo=アメリカ | site_geo=アメリカ | spf=pass | dkim=unknown | cloaking=unknown

iCloudを騙る「次回請求についてのお知らせ」は詐欺メール

このメールは、見えている本文だけでは終わりません。テキスト表示へ切り替えると、HTMLでは隠されていた別の文章まで現れました。リンクは開かず、Apple Accountの情報を入力しないでください。

危険度:★★★★★(5/5)

支払い失敗を装って「お支払い方法を更新する」よう促し、最終的にはApple Accountを模した偽ログイン画面へ誘導します。確認時にはウイルスバスターが誘導先を「フィッシング」と判定しました。

まずは、実際に届いたメール

実際に届いたiCloudを装う「お支払いに失敗しました」メール

件名は「iCloud次回請求についてのお知らせ」。本文には「お支払いに失敗しました」「お支払い方法を更新する」「50GBのストレージ(月額)150円」といった、請求トラブルを装う内容が表示されています。

ところが、画面をよく見ると日本語の途中に ??あ9="さわかli"??ぬx="tc9ly" といった意味不明な文字列が混ざっています。単なる文字化けに見えますが、メールソースを確認すると、もっと複雑な仕掛けが見えてきます。

※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載

テキスト表示に切り替えたら、“別のメール”が出てきた

テキスト表示に切り替えると、HTML表示では見えていなかった文章が出現

HTML表示をやめてテキスト表示へ切り替えると、HTML画面では見えていなかった文面が表へ出てきます。さらに末尾には、iCloudの請求とは関係のない丁寧なビジネス挨拶文が長々と続きます。

「誰ですか、あなた?」——HTMLの裏から別の本文が出現

これはメールのテキストパートを表示したことで発見できたものです。見えているHTML本文だけを読んでいた場合、この別文面には気づきません。

なぜHTMLでは見えなかったのか

HTML表示とテキスト表示の差に気づいたため、メールソースを確認しました。するとHTML側には、別本文を人間の画面から隠すための指定が複数確認できました。

指定 役割
display:none 要素を表示しない
font-size:0 文字サイズを0にする
height:0 表示領域を0にする
left:-9999px 画面外へ追い出す
visibility:hidden 要素を不可視にする
opacity:0 完全に透明にする

つまり、文章そのものが存在しないのではなく、HTML表示では見えないようにしているわけです。一方、プレーンテキスト表示ではCSSによる非表示処理が効かないため、隠していた文章がそのまま見えるようになります。

日本語の途中に混ざる謎の文字にも仕掛け

ソース内では、ゼロ幅系のUnicode文字を単語の途中へ混ぜたり、HTMLコメントを日本語の途中へ挿入して文字列を分断したり、意味のない data-* 属性を混ぜたりする処理も確認できます。

人間には読めても、内部の文字列は素直ではない

狙いそのものは断定できませんが、単純なキーワード一致型のメールフィルターを避けるための難読化を意識した可能性があります。

差出人もApple・iCloudではない

実際の送信元ドメインは mail11.zsgrxkd[.]cn。外部からの最初のReceivedとReceived-SPFで確認できた送信元IPは 108.174.195.204 です。

  • 国:アメリカ
  • 地域:テキサス州・ダラス判定
  • プロバイダー:HostPapa
  • AS:AS54290 / HOSTWINDS
  • 利用形態:hosting

108.174.195.204 のIP調査結果

SPFはPass。それでもApple公式とは限りません

今回のSPF Passは、zsgrxkd[.]cn 側がその送信元を認めているという意味です。「Appleのメールである」と証明するものではありません。DKIM署名は存在しますが、提示されたヘッダーには検証結果がないため dkim=unknown としています。

リンク先はなぜか2系統

HTMLソースでは、次の2つの誘導先が確認できます。

  • hxxps://peterskrzynecki[.]com/jPstdLMD/
  • hxxps://slyalibi[.]com/jPstdLMD/

確認時には、両ドメインとも 198.44.36.60 へ解決されました。IP調査では米国・ワシントン州Seattle判定、HostWinds LLC、AS54290、ホスティング/データセンター系のプロキシとして検出されています。

198.44.36.60 のIP調査結果

送信元と誘導先で同じASN「AS54290」を確認

これは観測できた共通点です。ただし、この事実だけで送信者と偽サイト運営者が同一人物・同一組織だと断定することはできません。

2つのドメインの登録情報

項目 peterskrzynecki.com slyalibi.com
作成日 2025-09-01 2025-09-11
更新日 2026-08-30 2026-08-30
期限 2026-09-01 2026-09-11
登録業者 Gname.com Pte. Ltd. Gname.com Pte. Ltd.

※WHOISサービス上の履歴IPと、今回確認した現在のDNS解決結果が異なる場合があります。記事では現在のAレコードと履歴情報を分けて扱っています。

ウイルスバスターが誘導先を「フィッシング」と判定

確認時、ウイルスバスターが peterskrzynecki.com 配下を「フィッシング」として遮断

今回の実アクセスでは、peterskrzynecki[.]com/jPstdLMD/ を開こうとすると、ウイルスバスター クラウドが「このWebサイトは、安全ではない可能性があります」「脅威の種類:フィッシング」と警告しました。

その先にはApple Accountを模した偽ログイン

誘導先で確認されたApple Accountを模した偽ログイン画面

メールでは「150円のiCloud請求失敗」として始まりますが、その先ではApple Accountのメールアドレスまたは電話番号を入力させる画面が表示されました。支払い更新を口実に、アカウント情報を入力させるフィッシングの流れです。

偽請求メール → 不審ドメイン → フィッシング警告 → Apple Account偽ログイン

「支払い方法の更新」を押させることが入口です。メール内のリンクからサインインせず、Apple公式アプリや自分で開いた公式サイトから確認してください。

Apple公式も、不審メールのリンクを開かないよう注意喚起

Appleは、思い当たるふしのない疑わしいメッセージでは本文中のリンクをクリックせず、添付ファイルも開いたり保存したりしないよう案内しています。また、支払い情報の更新を求めるメールを受け取った場合も、メール内リンクではなく、デバイスの設定画面や公式サイトから直接確認するよう案内しています。

Apple公式「フィッシングメッセージ、偽のサポート電話、その他の詐欺を含むソーシャルエンジニアリングスキームを認識し、対処する」

Apple公式「App StoreやiTunes Storeからの正規のメールを識別する」

もし情報を入力してしまった場合

  • Apple Accountのパスワードを公式サイト・公式設定画面から変更する。
  • 見覚えのないサインインや購入履歴がないか確認する。
  • 同じパスワードを他サービスで使っている場合は、そちらも変更する。
  • 不審なメールはAppleの案内に従って報告する。

まとめ——メールは「見えている文章」だけでできているとは限らない

今回のメールでは、本文中への意味不明な文字列の混在、ゼロ幅文字やHTMLコメントによる文字列分断、HTML表示で別本文を隠すCSS、text/plain側に混ぜられた無関係な長文、2系統の誘導先など、複数の難読化が確認できました。

見た目がApple風だから安全、SPFがPassだから本物、という判断はできません。今回のように、メールの表側と内部構造がまったく違うこともあります。差出人の実ドメインとリンク先を確認し、請求トラブルの通知が来てもメール内リンクから操作しないことが重要です。

Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit

IP調査参考:ip-sc.net

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