「【重要】ANA SKY COIN有効期限のお知らせ」は詐欺!マイクロソフト系IP(シンガポール)から香港Alibaba Cloudへ誘導する二段階リダイレクトの手口を解析

8月に入り、お盆の帰省や旅行の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。飛行機のチケットやマイルのことを考える機会が増えるこの時期を狙ったかのように、ANAマイレージクラブを騙る詐欺メールが今回も届きました。件名は「【重要】ANA SKY COIN 有効期限のお知らせ」。マイルをコインに交換したことがある方ほど、思わずドキッとしてしまう内容です。
📋 調査レポート:概要
| 総合危険度 | ★★★★☆(高) |
| 騙られたブランド | ANAマイレージクラブ(全日本空輸株式会社) |
| 件名 | 【重要】ANA SKY COIN 有効期限のお知らせ |
| 送信元IP(真の送信元) | 4.193.120.222(Microsoft Corporation/シンガポール) |
| SPF判定 | Pass(送信者が自分でSPFレコードを設定しているだけで、ANAの正規メールである証明にはなりません) |
| 誘導先サイト | 2段階リダイレクト(シンガポール発 → 香港Alibaba Cloud) |
| 受信日時 | 2026年8月7日(金) |
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
結論:このメールは100%詐欺(フィッシング)メールです。
本文中のリンクは絶対にタップ・クリックしないでください。
届いたメールの内容
実際に届いたメールの内容をそのまま再現します(技術検証のための引用です)。
件名:【重要】ANA SKY COIN 有効期限のお知らせ 送信者:ANAマイレージクラブ <yztdfdldmi@mail13.legalriskconsultants.com> ANAマイレージクラブをご利用いただき、ありがとうございます。 お客様がお持ちのANA SKY COINの一部が有効期限に近づいております。 有効期限を過ぎたSKY COINは無効となりますので、ご注意ください。 ■ ご利用方法 ・国際線・国内線特典航空券との交換 ・ANAトラベルプラザ/ANAショッピングでのご利用 ・パートナーホテル、レンタカー、各種ギフト券との交換 ・V-Points、楽天ポイント、Pontaポイントなどへの交換 失効予定日:2026年08月07日 対象SKY COIN:9,260コイン 【今すぐSKY COINを使う】 本メールは送信専用です。 ※有効期限を過ぎたSKY COINは再発行・復活できません。 ※お早めにANAウェブサイトまたはアプリよりお手続きください。
実際に届いたメールの画面。ANA公式のデザインを忠実に模倣している
緑色の帯に「ANAマイレージクラブ公式アカウントより送信」と表示するデザインは、7月下旬以降に複数の詐欺キャンペーンで使い回されている型(グリーンバナー+グリッド配置の個人情報欄)と同系統のものです。テンプレートを使い回すことで、攻撃者は短時間で別ブランドの偽メールを量産できます。
送信ルート解析:本当の送信元はどこか
メールヘッダーの「Received-SPF」欄に記録されたclient-ip=4.193.120.222が、実際にこのメールを送信したサーバーのIPアドレスです。国別データベース(GeoLite2)で調べたところ、このIPアドレスはシンガポールを拠点とするMicrosoft Corporation名義のサーバーであることが分かりました。
ANAは日本の航空会社ですから、正規のメールがシンガポールのマイクロソフト系サーバーから届くことはまずありません。加えて、送信元として名乗っているドメイン名はlegalriskconsultants.com――直訳すると「法的リスク・コンサルタント」です。詐欺メールを送るために「法的リスク相談」を名乗るドメインを使うとは、なんとも皮肉な話です。
さらにメールのDate(送信日時)欄には「-0700」というタイムゾーンが記載されており、これは米国太平洋時間を装ったものです。しかし実際の送信経路をたどると、認証に使われたサーバーは韓国のIPアドレス(49.165.135.68)でした。「アメリカから送った体(てい)」を装いながら、実態はアジア圏のインフラを転々としていることになります。メール配信には「Cuenote FC」という、本来は企業のメールマガジン配信などに使われる正規のツールが使われていました。正規のツールを使うことで、迷惑メールフィルターをすり抜けやすくする狙いがあると考えられます。
💡 用語解説:SPFって何?
SPF(エスピーエフ)とは、「このメールアドレスは、このサーバーから送ってよい」という設定のことです。今回のメールは「SPF: Pass(合格)」と判定されていますが、これは攻撃者が自分の持っているドメインに対して正しくSPF設定をしているだけであり、「ANAの正規メールである」ことの証明には一切なりません。自分の家の表札を勝手に「ANA公式」と書き換えているようなものだとイメージしてください。
フィッシングサイト解析:2段階のリダイレクトで香港へ
メール本文の「今すぐSKY COINを使う」ボタンをよく確認すると、実は表示されているデザインの割にリンク先の記述が崩れており、正しくボタンとして機能しないほど雑なHTMLになっていました。攻撃者側もかなり急いで量産しているのかもしれません。
■ 誘導リンクの構造
①メール内のリンク:hxxps://yourhealthongoogle[.]com
解決先IP:8.217.165.249(Alibaba/香港)
②リダイレクト先:hxxps://thesecretofprosperity[.]com/NYhiDQrE/
解決先IP:47.76.182.255(Alibaba Cloud/香港)
「①」のドメイン名は「あなたの健康をGoogleで(yourhealthongoogle)」という、ANAともマイルとも一切関係のない名前です。詐欺サイトはこうした無関係な単語の組み合わせドメインを大量に使い捨てにする傾向があります。
「②」のリンク先にアクセスしようとした際、ウイルスバスター クラウドが「フィッシングサイトの可能性」として自動的にブロックした画面
この時点で、セキュリティソフトを導入していれば多くの方が被害を免れます。セキュリティソフトの警告画面が出た場合は、絶対に「ブロックしたWebサイトにアクセス」を押さないでください。今回、警告を経由した先には以下のような、本物そっくりの偽ログイン画面が用意されていました。
「A STAR ALLIANCE MEMBER」のロゴまで再現された偽のANA会員ログインページ。お客様番号とWebパスワードの入力欄がある
このページにお客様番号とWebパスワードを入力してしまうと、その情報はそのまま攻撃者の手に渡り、本物のANAマイレージクラブアカウントを乗っ取られてしまいます。マイルやSKY COINの不正利用はもちろん、登録されているクレジットカード情報まで悪用される危険があります。
関連する過去の記事
ANAマイレージクラブを騙る詐欺メールは非常に多く、当ラボでも継続して調査しています。あわせてご覧ください。
- 【必読】ANA「未受取データの確認」は詐欺メール——HTML/テキスト二重構造の巧妙な偽装工作を暴く(本文中で今回と同じ「ANA SKYコイン」への交換が案内として登場していました)
- 【危険】詐欺メール調査報告:ANA「未加算マイル」通知の危険なリンク先と回線情報
注意点と対処法
✅ メール内のリンクは開かない:ポイントやマイルの有効期限は、必ず公式アプリやブックマークしておいた公式サイトから確認してください。
✅ 送信元アドレスを確認する:ANAの正規メールは「ana.co.jp」関連ドメインから届きます。今回のような聞き慣れない英語ドメインからの「ANA」名乗りは疑ってください。
✅ セキュリティソフトの警告は絶対に無視しない:「安全ではない可能性があります」と出たら、そこで引き返してください。
✅ 万が一入力してしまったら:すぐにANA公式サイト・アプリから正規の手順でパスワードを変更し、ANAマイレージクラブサポートデスクへ相談してください。
まとめ
「SKY COINの有効期限が迫っている」という言葉に慌てて、つい確認したくなる気持ちはよく分かります。しかしそれこそが攻撃者の狙いです。落ち着いて、公式アプリやブックマークからご自身で確認する習慣を持つことが、一番の防御になります。この記事が「あれ、これ怪しいかも」と思うきっかけになれば幸いです。ご家族、特にご高齢の方にもぜひ共有してください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
IPアドレスの脅威情報はIP調査兵団(ip-sc.net)のデータを参照しました。
















