「Webメールアップグレードに伴うメッセージ保留のお知らせ」は詐欺!香港発IPが”自社ドメイン”を騙る精巧ななりすましの正体

7月も後半に入り、猛暑日が続きますね。冷たい飲み物片手にメールチェックをしている方も多いと思いますが、今日はそんな油断した瞬間を狙うような、少し変わった詐欺メールをご紹介します。
| 緊急性レベル | ★★★☆☆ (3/5) |
| 偽装工作精度 | ★★★★☆ (4/5) |
■ メールヘッダー解析(送信者情報)
件名:[spam]【重要】Webメールアップグレードに伴うメッセージ保留のお知らせ
表示名:受信者自身が管理するドメインの名前を詐称
受信日時:2026年7月23日
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載です。
ご覧の通り、このメールは自分自身のドメインを騙った真っ赤な偽物です。送信元は攻撃者であり、正規のシステム通知ではありません。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。
それでは、実際に届いたメールの内容から見ていきましょう。
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです(送信者アドレス等は個人情報保護のため伏字にしています)。
2026年7月22日(木) 当社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。 【重要なご案内】 現在、最近実施されたWebメールのアップグレードに伴い、お客様のメールボックスに配信できなかったメッセージが保留状態となっております。 保留中のメッセージを確認・復元するには、以下のリンクをクリックしてください。 hxxps://juvaoil.com/certificate/ssl/adv/index.php/(以下パラメータ省略) ご不便をおかけして申し訳ございませんが、 何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます それでは今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ================================ 電話0120-052-134 (IP電話からは 075-152-9270) (平日10:00〜17:00)

実際に受信した詐欺メールの画面。送信者名・アドレスは個人情報保護のため伏字にしています
💡ここで! SPFの「Softfail」とは?
SPF(Sender Policy Framework)は、「このドメインから送られるメールは、このサーバーから送信されたものだけが正規です」とドメイン管理者があらかじめ宣言しておく仕組みです。受信側のメールサーバーはこれを見て、正規の送信元かどうかを判定します。「Softfail(ソフトフェイル)」は、その判定が完全な「失敗(=なりすまし確定)」ではなく、「ドメイン管理者はこのホストからの送信を推奨していないが、断定はしない」というグレーゾーンの結果です。攻撃者はこの中間的な判定を突くことで、完全にブロックされずに受信箱まで届けてしまうことがあります。
■ 送信ルート及び偽装判定
送信元IP(Received-SPFヘッダーより特定):
client-ip=202.69.74.130
回線情報(ip-sc.net確認):
プロバイダ:HKBN Enterprise Solutions HK Limited/AS9381(HKBNES-AS-AP)/利用形式:corporate
脅威レベル:高(攻撃対象:メール、と判定)
所在地:香港 九龍湾(Kowloon Bay)付近
SPF判定:Softfail
【偽装判定】:
今回のメールは、受信者自身が管理するドメインの名前をそのまま名乗って届きました。しかし送信元IPは香港の法人向け回線であり、ドメイン管理者が実際に契約しているメールサーバーとは一切関係がありません。自分自身のドメインを詐称するという、油断を誘う巧妙な手口です。SPFの判定がSoftfail(グレーゾーン)だったことも、このなりすましが完全にはブロックされずに届いてしまった一因です。
■ フィッシングサイト詳細解析
誘導先URL(伏せ字):hxxps://juvaoil.com/certificate/ssl/adv/index.php/(一部伏字)
リンクドメイン:juvaoil.com
サイトサーバーIP:148.163.69.163
回線情報(ip-sc.net確認):
プロバイダ:Input Output Flood LLC/AS53755(IOFLOOD)/利用形式:hosting/脅威レベル:低
ロケーション:アメリカ アリゾナ州 フェニックス
【サイトの状態】:当ラボの調査時点で、このドメインは既にホスティング事業者側でアカウント停止(Account Suspended)となっており、汎用のサスペンドページが表示される状態でした。何らかの理由でホスティング事業者に不正利用を検知され、停止処理が取られたとみられます。
ちなみに「juvaoil.com」というドメイン名、Webメールの偽サイトとは似ても似つかない、どこか植物油の通販サイトのような響きです。使い捨てドメインを大量に用意する際は名前まで気が回らないのか、こういった「本業と無関係な名前」がフィッシングインフラではよく見られます。

調査時点で誘導先サイトは既にホスティング事業者によりアカウント停止されていた
■ 注意点と対処法
- 差出人名が自分のドメインでも安心しない:SPFやDMARCの設定が不十分なドメインでは、第三者が容易に「自分自身」を名乗ってメールを送れてしまいます。
- メール内のリンクをクリックしない:「メッセージ保留」「アップグレード」を理由にリンクを踏ませようとする手口は非常に多く使われます。
- Webメールの状態は公式管理画面で確認:本当にメッセージが保留されているか気になる場合は、必ずご利用のメールサービス・レンタルサーバーの公式管理画面から直接ログインして確認してください。
- ドメインをお持ちの方はSPF/DMARCの見直しを:自社・個人のドメインを持っている方は、SPFレコードの設定強化やDMARCの導入で、こうした「なりすまし送信」自体を減らせる場合があります。契約しているレンタルサーバー事業者にご相談ください。
本レポートの結論
「自分自身のドメイン」という一見信頼できそうな体裁を悪用し、SPFのグレーゾーン判定(Softfail)を突いて偽の”Webメールアップグレード”通知を送りつける手口でした。誘導先サイトは調査時点で既にホスティング事業者側に停止されていましたが、同種の手口は今後も形を変えて届く可能性があります。身近な人が油断してからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで『これ気をつけて!』と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
配色テーマ:Amethyst
















