「弊社」と「当社」が混在
相変わらず「三井住友銀行」系の詐欺メールが続きます。
今度は「三井住友銀行アプリ」を騙ってきました。
こういったメールで、まず最初に注目していただきたいのは、差出人のメールアドレス。
”kfc333.com”なんてこれ、三井住友銀行さんの物ではありませんよね?
それに、本文冒頭の宛名がメールアドレスプラス「お客様」なんてのもとても不自然です。
更に「弊社では、お客様に安心してをご利用いただくことを目的に、この度、当社は」と
1行の中に2種類自社表現が表れています。
どちらも丁寧な表現ですが、「弊社」は社外に対して使う丁寧語で、「当社」は自社内で
使用する言葉ですからこの使い方は間違っていてビジネスメールとしては礼儀の無いメールと
いうことになりますね。
現在「三井住友」系の詐欺メールが大流行中で、当サイトでもいくつか取り上げてご紹介しておりますが
恐らく本家さんでも営業に支障が出るほどではないかと思われます。
少しでも被害者遭われる方が少なくなるよう、当サイトでも新しいものを見かけたら時間の許す限り
注意喚起を行っていきたいと思います。
では、このメールを解体し詳しく見ていきましょう!
まずはプロパティーから見ていきましょう。
件名は
「[spam] 【三井住友銀行アプリ】から重要なお知らせ番号:463700927」
ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。
末尾の連番は、恐らくランダム関数から導き出した適当な数字の羅列です。
この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。
このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている
ものは全て迷惑メールと判断されたもの。
うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと
否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。
差出人は
「"三井住友銀行" <useraccountu-update-account@kfc333.com>」
皆さんはご存じでしょうか?
この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。
ですから、ここは信用できない部分です。
先にも書きましたがこのメールアドレスは「三井住友銀行」さんの物ではありません。
「三井住友銀行」さんの正式なドメインは”smbc.co.jp”です。
正規ドメインが有るのにそれ以外のこのようなでたらめなドメインを使ったメールアドレスで
ユーザーさんにメールを送るなんて信用問題に関わる大きな問題です。
それにこの”kfc333.com”なんてドメインも本当に差出人のものがどうかわかりませんよ。
だってこのような文字数の少ない価値の高いドメインを詐欺に使うとは考えにくいですからね。
あら、もしかしてイオンの詐欺メールもやってらっしゃるの?
では、このメールがフィッシング詐欺メールであることを立証していきましょうか!
まず、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。
私が愛用のThunderbirdの場合、「表示(V)」⇒「メッセージのソース(O)」と進むと見られますよ。
ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。
Return-Path: 「useraccountu-update-account@kfc333.com」
”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される
メールアドレスです。
一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に
偽装可能なフィールドなのであてにできません。
|
Message-ID:「20230323013106051342@kfc333.com」
”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。
このIDは世の中に1つしかありません。
”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。
ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。
|
Received:「from aeon.co.jp (unknown [111.224.79.81])」
あらら”aeon.co.jp”って…
あなたイオンの詐欺メールにも加担しているのですか?(;’∀’)
”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む
自局のホスト情報です。
ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。
すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。
記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。
|
この差出人は、あくまで自分のドメインは”kfc333.com”と言い張るようですね。
ならばその鼻っ柱をへし折ってやりましょうか!
先に書いた通り”Received”に記載のIPアドレスは差出人が利用したメールサーバーのもの。
このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば
メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法
違反となり処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰する
では、メールアドレスにあったドメイン”kfc333.com”について調べてみます。
ほらね。
「対応するIPアドレスがありません」と書かれているのでこのドメインは、どのIPアドレスにも
割り当てられておりません。
IPアドレスの割り当てがないドメインはネット上で使うことはできませんのでこれでアドレス偽装は確定。
この方にはしっかり罪を償っていただかなければなりませんね!
「フィールド御三家」の中で一番重要なのは”Received”
これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。
”Received”のIPアドレス”111.224.79.81”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
IPアドレスを元にしているので、かなりアバウトな位置であることをご承知いただいた上でご覧ください。
「Hebei」 「Shijiazhuang Shi」とあるので、代表地点としてピンが立てられたのは
中国河北省石家荘市付近です。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。
会社名も住所も間違ってるってずさんすぎません?
では引き続き本文。
いつも三井住友銀行アプリをご利用いただきありがとうございます。
弊社では、お客様に安心してをご利用いただくことを目的に、この度、当社はセキュリティシステムの大幅なアップグレードを実施しているため、ご登録された個人情報を再確認する必要がございます。つきましては、以下へアクセスの上、ご登録された個人情報の確認にご協力をお願い致します。
■ご利用確認はこちら
お客様のセキュリティは弊社にとって非常に重要なものでございます。
ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
※本メールはご登録いただいたメールアドレス宛に自動的に送信されています。
※本メールは送信専用です。ご返信いただきましてもお答えできませんのでご了承ください。
三井住友銀行株式会社
東京本社東京都港区海岸1-2-20汐留ビルディング
大阪本社大阪市中央区今橋4-5-15 |
署名に書かれている会社名は「三井住友銀行株式会社」と後ろ株になっていますが
本当の社名は「株式会社三井住友銀行」と前株で、こちらの本家サイトで確認できます。
それに住所として書かれているのは「東京本社東京都港区海岸1-2-20汐留ビルディング」
これも間違っていて、ここには「三井住友銀行株式会社」は存在せず、本社は全然違う場所の
「東京都千代田区丸の内一丁目1番2号」です。
ちょっと調べればわかることなのに、相変わらずいい加減でずさんですね…(;^_^A
このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。
そのリンクは「ご利用確認はこちら」って書かれたところに張られていて、リンク先の
URLとトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」での危険度評価がこちらです。
このように既に危険サイトと認識されており、ブラックリストに登録済み。
そのカテゴリは「フィッシング」と書かれています。
このURLで使われているドメインは”sisterbuddha.com”
このドメインにまつわる情報を取得してみます。
ああ、調査が少し遅かったようですね。(^^;)
ミッションを達成したのか、それとも当局に規制されたのか、既にこのドメインは
どのIPアドレスも割り当てられておらず詐欺サイトもいったん閉鎖されたようです。
でも、ご覧のようにドメインは放棄されておいつでも復旧可能な状態であることが分かります。
まとめ
なんか最近「三井住友」関連のメールばかりご紹介している気がします。
幸い私はこちらに口座を開いていないので安心ですが、ユーザーの方は要注意です!
恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの
フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。
次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |