【】内だけ変えれば転用できる優れもののテンプレ
いよいよ夏休みに突入した地域も多いことと思います。
通勤時に学生や子供たちな少なくなったので幾分車の運転も楽になったような気がします。
さて今回は、マスターカードに成りすましたテンプレ利用のフィッシング詐欺メールのお話。
1日にこのテンプレを使ったメールが何通届くことやら…
もちろん同一犯の犯行だと思われますが【】の中の信販企業の名称だけ変えればいくらでも
転用できる優れもののテンプレートです。
では、このメールも解体し詳しく見ていくことにします。
まずはプロパティーから見ていきましょう。
件名は
「[spam] 【最終警告】マスターカード からの緊急の連絡」
ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。
おどろおどろしい件名ですね、もしかして「最終警告」なんて書けば見てくれるとか思ってます?(笑)
この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。
このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている
ものは全て迷惑メールと判断されたもの。
うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと
否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。
差出人は
「"Mastercard" <info@mastercard.co.jp>」
皆さんはご存じでしょうか?
この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。
ですから、ここは信用できない部分です。
上手く化けたつもりしょうか?…
”mastercard.co.jp”は確かに「マスターカード」さんのドメインですが、件名に”[spam]”とあるので
このメールは詐欺メール故に偽装の疑いがあります。
その辺りを含め、次の項で見ていくことにしましょう。
鼻っ柱をへし折ってやる!
では、このメールがフィッシング詐欺メールであることを立証していきましょうか!
まず、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。
私が愛用のThunderbirdの場合、「表示(V)」⇒「メッセージのソース(O)」と進むと見られますよ。
ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。
Return-Path: 「yhoyeojg@mastercard.co.jp」
”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される
メールアドレスです。
一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に
偽装可能なフィールドなのであてにできません。
|
Message-ID:「4FA65E2CBDEAE528BB10BE4DB64AEE4E@mastercard.co.jp」
”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。
このIDは世の中に1つしかありません。
”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。
ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。
|
Received:「from mastercard.co.jp (unknown [120.48.118.52])」
”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む
自局のホスト情報です。
ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。
すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。
記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。
|
この差出人は、あくまで自分のドメインは”mastercard.co.jp”と言い張るようですね。
ならばその鼻っ柱をへし折ってやりましょうか!
先に書いた通り”Received”に記載のIPアドレスは差出人が利用したメールサーバーのもの。
このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば
メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法
違反となり処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰する
では、メールアドレスにあったドメイン”mastercard.co.jp”について調べてみます。
当然ちゃんと「マスターカード・ジャパン」さんの持ち物です。
そして”216.119.209.72”がこのドメインを割当てているIPアドレス。
本来同じでなけれならない”Received”のIPアドレスが”120.48.118.52”ですから全く異なります。
これでアドレス偽装は確定。
この方にはしっかり罪を償っていただかなければなりませんね!
「フィールド御三家」の中で一番重要なのは”Received”
これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。
”Received”のIPアドレス”120.48.118.52”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
IPアドレスを元にしているので、かなりアバウトな位置であることをご承知いただいた上でご覧ください。
ピンが立てられたのは、フィッシング詐欺メールの一大生産地の北京にある「天安門広場東側」付近です。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。
そもそもマスターカードからメールが来るはずがない
では引き続き本文。
【Mastercard 】利用いただき、ありがとうございます。
このたび、ご本人様のご利用かどうかを確認させていただきたいお取引がありましたので、
誠に勝手ながら、カードのご利用を一部制限させていただき、ご連絡させていただきました。
つきましては、以下へアクセスの上、カードのご利用確認にご協力をお願い致します。
お客様にはご迷惑、ご心配をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解いただきたくお願い申しあげます。
ご回答をいただけない場合、カードのご利用制限が継続されることもございますので、予めご了承下さい。
■ご利用確認はこちら |
嫌と言うほど見てきた文面です。
このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。
そのリンクは「■ご利用確認はこちら」って書かれたところに張られていて、リンク先の
URLがこちらです。
このサイトの危険性をトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」で確認してみます。
おっと、まだ「未評価」のようです。
このようなフィッシング詐欺サイトがこの評価ではあまりにも危険すぎます。
評価を変更していただけるよう早速申請しておきます。
このURLで使われているドメインは、サブドメインを含め”www.viseoscai.vscsaeeicso.oartlt.top”
このドメインにまつわる情報を取得してみます。
申請は、中国のアリババグループの「阿里雲(Aliyun)」と言うレジストラ。
詐欺サイト運営者はこのレジストラにドメインの取得を依頼したようです。
このドメインを割当てているIPアドレスは”198.12.127.206”
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
ピンが立てられのは、カナダのハミルトン付近。
この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。
「サイトセーフティーセンター」では未確認とされていたので、一応安全な方法でリンク先の
詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。
するとまず、Chromeが危険を察知したのか接続をブロックされてしまいました。
危険なのを承知で先に足を進めてみると…
マスターカードさんのログインページが開くと思いきや、なんと初っ端からカード情報や
個人情報を求めるフォームが開きました。
それによく見てください、フッターにある著作権表示。
「Copyright(C) Mitsubishi UFJ NICOS Co.,Ltd.All Rights Reserved.」
あなた、マスターカードさんじゃなかったっけ?(;^_^A
最近多いんですよね、このパターン。
よくよく考えてみると、マスターカードやDCカードってクレジットカードの国際ブランドで
決済システムを提供している企業。
実際にクレジットカードは金融機関など信販企業が発行しユーザーの管理をします。
なので、マスターカードにはユーザー登録もしないし、ましてやユーザー用のサイトも無いので
ログインページも存在しません。
ですからマスターカードから直接個人あてにメールなど来るはずがないのです。
まとめ
それにしてもメール本文をテンプレートで共有するのは良しとしても、詐欺サイトまで共有するとは…
それでも騙される人いるんでしょうね。(;^_^A
恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの
フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。
次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |