【検証】総務省・年金機構・デジタル庁・Adobe…同じ送信元から名乗りを変えて4通

HL-META: date=2026-06-22 | brand=総務省/日本年金機構/デジタル庁/Adobe Sign(複数同時偽装) | sender_geo=ロシア・ハバロフスク | site_geo=添付HTML経由のため未解析 | spf=fail/none | dkim=不明 | cloaking=no

【検証】総務省・年金機構・デジタル庁・Adobe…同じ送信元から名乗りを変えて4通

Heartland-Lab (ハートランド・ラボ) 専門調査レポート・続編

前回の記事では「日本郵便」の件名なのに本文は「総務省」を名乗るという矛盾だらけのフィッシングメールを解析しました。実はこのメール、もっと大きな仕掛けの一部に過ぎませんでした。当ラボには同じ朝、わずか8分の間に、総務省・日本年金機構・デジタル庁・Adobe Signという全く異なる4つの組織を次々に名乗ったメールが届いていたのです。件名も送信者名も偽装先のドメインも毎回違うのに、ヘッダーを調べると送信元はすべて同一でした。今回は4通を横並びで比較し、この攻撃キットの正体を浮き彫りにします。

※重要:4通とも添付されているHTMLファイルは絶対に開かないでください。Heartland-Labでも安全のため添付の解析は行っておりません。

緊急性レベル ★★★★☆ (4/5)
偽装工作精度 ★★☆☆☆ (2/5) ※件名・送信者名・偽装ドメインの組み合わせがバラバラで、テンプレートの取り違えが目立つ

■ 4通の比較一覧

2026年6月22日(月)朝、07:22〜07:30の約8分間に届いた4通です。件名・送信者名・偽装先ドメインはすべて異なりますが、注目していただきたいのは右端の「送信元IP」の列です。

件名 送信者表示名 偽装先ドメイン SPF結果 添付ファイル名 受信時刻 送信元IP
日本郵便 – 不在配達通知/荷物受け取り確認 総務省 行政デジタル推進室 soumu.go.jp(正規ドメイン偽装) Fail 公式通知_164503.html 07:30:13 212.19.23.205
国税庁より:令和8年度還付金手続きのご案内 日本年金機構 給付事業部 nenkin.go.jp(正規ドメイン偽装) Fail 公式通知_724593.html 07:29:22 212.19.23.205
みずほ銀行 – 重要契約書類の電子署名のお願い Adobe Sign 日本法人 adobe-sign.jp(独自偽ドメイン) None 公式通知_307483.html 07:28:31 212.19.23.205
PayPay銀行 – 不審ログイン検知および本人確認 マイナンバー総合窓口 デジタル庁連携 digital.go.jp(正規ドメイン偽装) Fail 公式通知_809095.html 07:22:30 212.19.23.205

4通すべての送信元IPが完全一致。これは間違いなく同一の攻撃者・同一のキットによる組織的な送信です。家族のLINEグループで「こんな手口がある」と共有してください。

まず注目していただきたいのが、送信元IP「212.19.23.205」の一致です。前回記事で取り上げた「日本郵便/総務省」のメールと全く同じこの数字が、国税庁を装ったメール、みずほ銀行を装ったメール、PayPay銀行を装ったメールにもすべて記録されていました。ホスト名も「host.212-19-23-205.broadband.redcom.ru」で完全一致しており、ロシア・ハバロフスク地方の家庭用ブロードバンド回線(プロバイダー:Redcom-Bb、利用形式:consumer)から、約8分間で性質の異なる4通が次々に送られていたことになります。

■ 送信元の同一性について

※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載。4通すべてのReceivedヘッダーに、同一の中継ルート(dmail03.kagoya.net → fmail21/22.kagoya.net → mas17.kagoya.net)と同一の送信元IP(212.19.23.205)が記録されていることを確認しています。

発信元ロケーション解析(4通共通):
ロシア・ハバロフスク地方・ハバロフスク市
プロバイダー:Redcom-Bb(DSL・個人向け回線)
IPアドレス調査:ip-sc.netで詳細を確認する(脅威レベル「高」、攻撃対象「メール」と判定)
Googleマップ:【位置情報を確認する】
※前回記事「日本郵便・総務省編」と同一の送信元のため、ロケーション情報は前回調査時のものを参照しています。

もう一つ面白いのが、SPF(送信ドメイン認証)の結果に違いが出ている点です。総務省・日本年金機構・デジタル庁を名乗った3通は、本物の政府ドメイン(go.jp)を騙っているため「Fail(認証失敗)」という結果になります。一方Adobe Signを名乗ったメールだけは「None(SPFレコードなし)」という結果でした。これは「adobe-sign.jp」という攻撃者が独自に取得した偽ドメインを使っているためで、そもそもSPFの設定自体が存在しないからです。正規の組織になりすますか、似た名前の偽ドメインを自作するかで、認証結果の出方が変わるという技術的な違いが見えてきます。

■ もう一つの共通パターン:添付ファイル名の法則

4通すべてに「公式通知_」+6桁のランダムな数字+「.html」という共通の命名パターンの添付ファイルが付けられています(164503/724593/307483/809095)。件名や送信者名は使い回しているのに、添付ファイル名だけは律儀に毎回変えているのは、おそらくメールセキュリティソフトの「同一ファイル名のブラックリスト化」を回避するためと考えられます。手口の粗さと、細部だけ妙に丁寧な作り込みのギャップが、この攻撃キットの面白いところです(笑)。

▼ 受信した詐欺メールの一例(本文・送信者・添付ファイル名)

▼ 同日に届いた件名・送信者・受信時刻の一覧(メールボックス表示)

■ 注意点と対処法

  1. 添付ファイルは絶対に開かない:特にHTML形式の添付ファイルは、開いた瞬間に攻撃が始まる可能性があります。
  2. 件名と送信者名・本文の組織名が一致しているか確認する:今回のように行政機関と銀行が入れ替わっているような矛盾は、なりすましメールの強力な手がかりになります。
  3. 「.go.jp」や銀行の正規ドメインでも油断しない:表示上のドメインが本物そっくりでも、SPF認証が失敗していれば偽物です。心当たりのない通知は、メール経由ではなく公式サイトに直接アクセスして確認してください。
  4. 短時間に複数の組織を名乗るメールが届いたら警戒する:同じ送信元から立て続けに違う組織を名乗るメールが届くのは、組織的な大量配信の特徴です。

本レポートの結論

総務省、日本年金機構、デジタル庁、Adobe Signという全く異なる4つの組織を次々に名乗ったメールは、すべて同じロシア・ハバロフスクの家庭用回線から、わずか8分間で送られたものでした。件名・送信者名・偽装ドメインはバラバラなのに、送信元という最も基本的な部分だけは変えられていません。これがなりすましメールの実態です。「公的機関や銀行から来た」という肩書きだけで信用せず、必ず送信元と公式サイトを確認する習慣をつけてください。身近な人が騙されてからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで『これ気をつけて!』と共有してあげてください。

Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net

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