【実録】Amazon「配達完了」偽メール——ウイルスバスター・Chrome・Cloudflare三重検知も、スマホなら簡単に突破できる巧妙な罠

いつも「Heartland-Lab」をご覧いただきありがとうございます。今回は「配送状況のご確認:Apple Watch SE 3 が配達完了しました」という件名で届いた、Amazonを騙る詐欺メールを解析していきます。身に覚えのない配達完了通知は、思わずクリックしたくなる典型的な手口です。
ご覧の通り、このメールはAmazon公式を装った真っ赤な偽物です。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族や職場のグループに転送して注意喚起してください。
1. 実際に届いた「配達完了」メールの全貌
まずは実際に届いたメールの画面を確認しましょう。緑色の帯に「Amazonより送信されたメールです」と表示し、ダークネイビーのメニューバーまで再現するなど、公式メールと非常によく似た見た目に仕上げられています。
※実際に届いた「配達完了」偽メールの画面です。
身に覚えのない「Apple Watch SE 3」の配達完了通知に加え、注文番号やお届け先住所まで記載されているように見せかけていますが、実際にはいずれも実体のない演出です。
注文した覚えのない商品の「配達完了」通知が届いたら、それこそが詐欺メールである何よりの証拠です。「配送状況を確認」ボタンには絶対に触れないでください。
2. 送信ルートおよび偽装判定
メールヘッダーのうち、送信元を特定するもっとも信頼できる情報である「Received-SPF: client-ip=」を確認したところ、実際の送信元は 35.247.210.199 でした。
| 送信元IP | 35.247.210.199 |
| プロバイダー | Google Cloud Platform(AS396982) |
| 所在地 | ブラジル・サンパウロ州サンパウロ市(データセンターの所在地表示) |
| SPF判定 | Pass(攻撃者が自分で用意したドメインのため) |
| 脅威レベル判定 | 低 |
送信元は世界最大級のクラウド事業者であるGoogle Cloud Platformのブラジル・サンパウロリージョンでした。攻撃者はここに自分専用の使い捨てドメインを設置し、正しくSPFを設定することでフィルターの「Pass」判定をすり抜けています。
💡ここで!「SPF」「クローキング」って何?
SPF(Sender Policy Framework)とは、「このドメインからのメールは、このサーバーから送っていいですよ」とあらかじめ登録しておく仕組みです。攻撃者が自分専用の詐欺用ドメインを用意すれば、自分でSPFを正しく設定してPass判定にすることができてしまいます。
クローキングとは、アクセスしてきた端末やソフトの種類によって、表示するページを意図的に変える手口のことです。今回のように、パソコンとスマートフォンで結果が変わるのはその一例です。
3. フィッシングサイト詳細解析——3つのセキュリティ機構をすり抜けてスマホに到達
メール本文中の「配送状況を確認」ボタンのリンク先を調査したところ、非常に興味深い結果が得られました。まずこのリンク(hxxps://ha2daogflfsdfs[.]com/lsod/woe)から最終的な誘導先であるhxxps://chexs8[.]com/amazon.jp/へアクセスしようとすると、実に3つの独立したセキュリティ機構がそれぞれ個別にフィッシングを警告しました。
まずウイルスバスター クラウドが「このWebサイトは、安全ではない可能性があります」として、脅威の種類を「フィッシング」と明示的に警告しました。
※ウイルスバスター クラウドによるフィッシング警告画面です。
続けて、GoogleのセーフブラウジングによるChromeの警告画面も表示されました。
※Google セーフブラウジングによるChromeの「危険なサイト」警告画面です。
さらにCDN大手のCloudflare自身も「Suspected Phishing(フィッシングの疑いあり)」という警告を表示しています。
※Cloudflareによる「Suspected Phishing」警告画面です。
| 誘導先ドメイン | hxxps://chexs8[.]com/amazon.jp/ |
| 解決先IP | 104.21.76.135(Cloudflareのanycast帯域) |
| 所在地情報 | Cloudflareのプロキシ経由のため特定不可(不明) |
| セキュリティベンダーの検知 | ウイルスバスター・Chrome・Cloudflareの3機構すべてがフィッシングと認定 |
3つものセキュリティベンダーが揃って警告を出しているという事実そのものが、このサイトが危険である何よりの証拠です。ここまで分かりやすく警告が出ても、それでもなお偽サイトに人を誘導しようとしてくる攻撃者の粘り強さには驚かされます。
パソコンから警告を突破しようとアクセスを続けると、以下のように接続そのものがタイムアウトし、サイトへたどり着けませんでした。
※PC側でアクセスした際のタイムアウトエラー画面です。
一方、同じURLへスマートフォンからアクセスすると、警告さえ突破すれば何の問題もなく、本物そっくりの偽Amazonサインイン画面にたどり着いてしまいました。
※スマホ側で表示される偽Amazonサインイン画面です。
「セキュリティソフトが警告を出したから安全」ではなく、警告が出た時点でその先には絶対に進まないことが鉄則です。特にスマートフォンは警告を閉じる操作が簡単なため、つい先に進んでしまいがちです。ここに携帯電話番号やメールアドレス、続く画面でパスワードを入力すると、そのままアカウント情報が攻撃者に渡ってしまいます。
4. こうしたメールが届いたときの対処法
- 身に覚えのない「配達完了」通知が届いたら、まずリンクを開かずメール自体を削除する
- 注文状況を確認したい場合は、Amazon公式アプリや公式サイトへ直接アクセスして「注文履歴」を確認する
- セキュリティソフトやブラウザが警告を出した場合は、理由を問わずそこで引き返す
- 送信者の表示名だけでなく、実際のメールアドレスのドメイン(@より後ろ)が本物か必ず確認する
- 万が一IDやパスワードを入力してしまった場合は、公式サイトから直ちにパスワードを変更する
「配達完了」という既成事実を装う手口は、内容を確認したくなる心理を巧みに利用しています。焦って対応する前に、本当に注文した覚えがあるかどうか、まずは落ち着いて思い出してみましょう。
今回の記事が役に立ったら、家族や職場の仲間にもぜひ共有してください。同じメールが届いている方がいるかもしれません。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
※本記事に記載のIPアドレス・ロケーション情報は調査時点(2026年7月)のものであり、日々変化する可能性があります。
根拠データ参照元:ip-sc.net
使用配色テーマ:Forest(PRIMARY #1b4332 / ACCENT #cc0000)














