「【重要】NHK受信料のお支払いについて」NHKを名乗る詐欺メール|他社ドメインから届き、偽のNHK ONEログイン画面へ
休日の朝、のんびりコーヒーを飲みながらメールを確認する時間は、ほっとしますよね。そこに「【重要】」の文字で受信料の支払いを知らせるメールが届いたら、つい手が止まってしまうかもしれません。今回の「【重要】NHK受信料のお支払いについて」は、先にお伝えすると、詐欺(フィッシング)メールです。落ち着いて、一緒に中身を見ていきましょう。
HEARTLAND-LAB 調査レポート
「【重要】NHK受信料のお支払いについて」
NHKを名乗る詐欺メール
他社のドメインから届き、偽のログイン画面へ誘導するメール
| 受信日 | 2026年10月24日 |
| なりすまし先 | NHK(受信料のお支払い) |
| 危険度 | ★★★☆☆(偽サイトはIDとパスワードの入力画面を確認。ただしセキュリティソフトが警告を出して止めてくれました) |
| 送信元の判定 | SPF:Softfail(許可されていないサーバーから送られた疑い)/DKIM:署名なし |
| 送信サーバー | 香港(登録情報上の所在地) |
| 偽サイトのサーバー | 香港(登録情報上の所在地) |
| 表示の切り替え(クローキング) | 確認されず |
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
このメールは偽物です
リンクは押さず、IDやパスワード、カード情報は入力しないでください。もう開いてしまった方も大丈夫です。このあとの「対処法」を順番にご覧ください。
届いた詐欺メールの中身
件名は「【重要】NHK受信料のお支払いについて」。登録のクレジットカードで2か月分の受信料を確認できなかった、という内容です。本文は次のとおりです(リンクの部分は[ ]で表記しています)。
NHKふれあいセンターでございます。 このたびは、NHK受信料をお支払いいただき、誠にありがとうございます。 2026年9月~2026年10月分のNHK受信料(2か月分)につきまして、ご登録のクレジットカードによるお支払いを確認することができませんでした。 ────────────────────── ■ ご請求内容 契約種別:地上契約(テレビご契約) ご請求額:2,200円(2か月分・税込) 請求対象期間:2026年9月~2026年10月分 ────────────────────── お支払いが確認できない場合、残高に関するお知らせを順次お送りしております。お手数ですが、下記のいずれかの方法にてお支払いをお願いいたします。 ■ お支払い方法 ① クレジットカードでお支払い(変更・更新) [▶ クレジットカードによるお支払い方法のご登録・変更] ② 口座振替でお支払い(2か月分・税込2,200円) ※お支払い用紙を順次ご郵送いたします。 ③ お支払い用紙(コンビニ・郵便局等)でお支払い ご不明な点がございましたら、下記のNHKふれあいセンターまでお問い合わせください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NHKふれあいセンター ────────────────────── 0570-077-077(ナビダイヤル) 受付時間:9:00~18:00(土日祝も受付) IP電話等は 050-3786-5003(有料) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本放送協会 〒150-8001 東京都渋谷区神南2-2-1

▲ 実際に届いたメール画面(受信者情報は伏せています)
金額は2,200円と、「うっかり払い忘れたのかも」と思える手ごろな額に抑えられています。また、末尾には電話番号と住所までていねいに書かれているため、一見すると本物の請求のように見えます。ただ、こうした連絡先の情報は公式のものを写して載せることができるので、書いてあるからといって本物の証拠にはなりません。
もうひとつ気になるのは、3つ並んだ支払い方法のうち、リンクが付いているのが「クレジットカードのご登録・変更」だけという点です。押させたいのは、この1か所だけなのです。
どこから送られてきたのか
表示名は「NHK受信料」ですが、よく見ると、表示名の中にNHKのメールアドレス風の文字列が書き込まれていました。メールソフトの一覧に、あたかもNHKのアドレスから届いたように見せるための細工です。ところが、実際の送信元のメールアドレスは、NHKとは関係のない某大手通信会社のドメインでした。NHKを名乗りながら、他社のドメインから送るという、ちぐはぐな作りです。
メールの経路を調べると、送信元のIPアドレスは 45.142.154.155 でした。登録情報上は香港(九龍)で、事業者向けのホスティング回線です。そのドメインの正規の持ち主が送ったとは考えにくく、ドメインが悪用されたか、乗っ取られた可能性もあります。なお、メールには送信者の本人確認にあたる署名(DKIM)も付いていませんでした。
📖 用語解説:SPFとDKIM(メールの身元確認)
SPFは「このサーバーから送ってよい」という許可リストとの照合です。今回の結果は「Softfail」で、「許可されていないサーバーから送られた疑いがある」という意味です。
DKIMは、メールに付ける「電子的な封印」です。今回は封印が付いていませんでした。
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
リンクの先はどうなっている?
詳しく調べると分かったことをお伝えします。リンクの本当の飛び先は、次のアドレスでした(誤ってクリックされないよう、先頭を変えて表記しています)。
hxxps://nhk-pro.vlz9sh4.pro/cllQXWcX/
「nhk」の文字は入っていますが、NHKの公式ドメインではありません。お使いのセキュリティ対策が、この先のページを止めてくれた画面が次の2枚です。ウイルスバスター クラウドは脅威の種類を「フィッシング」と判定し、Chromeも「危険なサイト」として警告を出しました。

▲ ウイルスバスター クラウドが「フィッシング」として警告した画面

▲ Chromeのセーフブラウジングが「危険なサイト」と警告した画面
警告を承知のうえで中身を確認したところ、表示されたのは「NHK ONEへのログイン」を名乗る画面でした。メールアドレスまたはログインIDと、パスワードを入力させる作りです。ここで入力すると、入力した内容が攻撃者の手に渡ってしまいます。

▲ 「NHK ONE」を名乗る偽のログイン画面(IDとパスワードを入力させる作り)
ここにも、攻撃者の詰めの甘さが出ています。メールは「クレジットカードの登録・変更」へ誘っているのに、飛び先はカード情報の入力画面ではなく、NHK ONEのログイン画面でした。筋書きとリンク先がかみ合っていません。
この偽サイトのIPアドレスは 195.86.16.208 で、登録情報上の所在地は香港(九龍)でした。ドメインの名前解決にはCloudflareのネームサーバーが使われており、同じサーバー上に、ほかに28件のサイトが載っているという情報もあります。このドメインが指すIPは、1年ほどの間に4回変わっていました。
なお、この所在地は「サーバーの登録上の場所」で、攻撃者本人の居場所を示すものではありません。端末や地域によって表示が変わる細工(クローキング)は、今回は確認されませんでした。ただし、サイトの中身は後から差し替えられることがあるため、安全とは言い切れません。
同じ日に届いた別の詐欺メールと、同じサーバーでした
実はこのメール、同じ日に届いた別の詐欺メールと、偽サイトのIPアドレスがまったく同じでした。ゆうちょ銀行を名乗る「ご利用代金明細のお知らせ」の偽サイトも、195.86.16.208 に置かれていたのです。送信元も、同じ香港の同じ事業者の回線でした。
▶ 関連記事:「ご利用代金明細のお知らせ」ゆうちょ銀行を名乗る詐欺メール
名乗る相手はNHKとゆうちょ銀行とまったく違うのに、裏側の設備が共通している、という点は注目です。同じ攻撃者グループが、ブランドを次々と入れ替えながら使い回している可能性があります(あくまで可能性で、断定はできません)。見た目の違いにだまされず、「リンクの先を確かめる」習慣が大切です。
注意点と対処法
まず、焦らなくて大丈夫です。メールを受け取っただけで被害が出ることはありません。以下を順に確認してください。
- メールのリンクは押さない。返信もせず、そのまま削除して大丈夫です。
- 受信料の支払い状況が気になるときは、メールではなく、手元の請求書や、ご自身で調べた公式の窓口から確認しましょう。
- メールに書かれた電話番号にかけるより、公式の窓口の番号を、ご自身で改めて調べてかけ直すと安心です。
- もしIDやパスワード、カード情報を入力してしまっても、責める必要はありません。すぐにカード会社の窓口へ連絡し、パスワードを変更し、同じパスワードを使い回しているほかのサービスも変更してください。
- 身に覚えのない請求や引き落としがないか、利用明細をこまめに確認しましょう。
まとめ:支払いの催促は、メールのリンクではなく公式の窓口で
電話番号や住所が書いてあっても、リンクの先が本物とは限りません。迷ったら、まず家族や周りの方にこの記事を見せてあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
IPアドレスの調査には ip-sc.net(IP調査兵団) を参照しています。





