【厚生労働省】特別定額給付金(1人10万円給付)は詐欺メール!スマホだけに偽Google Playが現れる「専用アプリ」誘導の手口

9月も終わりに近づき、朝晩に秋の気配を感じる季節になりました。物価高が続くなか、「給付金」という言葉には、つい目が留まってしまいますよね。今朝届いたのは、その気持ちにつけ込む一通でした。
HEARTLAND-LAB SECURITY RESEARCH UNIT
調査レポート:概要
解析対象:厚生労働省を騙る「特別定額給付金(1人10万円給付)」メール
結論:これは詐欺メールです。ボタンは押さず、「専用アプリ」も入れないでください。
| 受信日時 | 2026年9月29日 6:36(日本時間) |
| 差出人の表示名 | 厚生労働省 |
| 実際の送信ドメイン | mail34.leng-shui-ta.com(厚生労働省とは無関係) |
| 送信元IP | 8.230.14.204(Google Cloud上のサーバー/韓国・ソウル) |
| SPF | pass(送信ドメイン自身の認証で、厚生労働省の証明ではありません) |
| DKIM | 署名あり(送信ドメイン自身の署名。検証結果の記載はなし) |
| 本文ボタンのリンク先 | hxxps://giftcashd.com |
| 最終的に着地したページ | hxxps://hhmjjdfwzx.com/transtioncash/ |
| クローキング | あり(PCではエラー、スマホでは詐欺ページ。実測で確認) |
| 添付ファイル | なし |
| 危険度 | ★★★★★(公式ストア外のアプリをインストールさせる手口) |
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
🚫 これは厚生労働省からのメールではありません(偽物です)
メール内のボタンは押さず、「専用アプリ」も入れないでください。
届いたメールの内容
まずは、実際に届いた文面をそのまま再現します。「1人10万円給付」という大きな赤い文字と、役所の資料のような細かい説明で、本物らしく見せようとしています。
件名:【厚生労働省】からのお知らせ 特別定額給付金(1人10万円給付) 差出人:厚生労働省 厚生労働省 【厚生労働省】からのお知らせ 特別定額給付金 (1人10万円給付、物価高騰対策関連) ~厚生労働省からのお知らせ~ 物価高騰対策支援に伴い、 【高齢者向け地域振興応援特別定形給付金】 【1人10万円給付】 ※施策の目的 内閣府では、エネルギー・食料品価格の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者の支援を通じた地方創生を図るため、「デフレ完全脱却のための総合経済対策(令和5年11月2日閣議決定)」への対応として、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施できるよう、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」(重点支援地方交付金)を創設するとともに、低所得世帯、高齢者世帯への支援のための「高齢者世帯、及び低所得世帯支援枠」を創設しています。 また、令和8年度与党税制改正大綱のとりまとめと併せて成案を得た「高齢者世帯及び定額減税を補足する給付」に対応するため、令和7年12月に「給付金・定額減税一体支援枠」及び「給付支援サービス活用枠」を創設しています。 ・「物価高騰対策」において、高齢者の生活の維持に必要な支援を簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う。 ・物価高騰対策に基づく政府特別対策につき、給付金10万円を進呈。 ・期間:令和8年08月23日~令和8年12月30日 ※事業費(令和8年度補正予算(第1号)計上額) 3兆1135億円 ・給付事業費:1兆7,344億14百万円 ・事務費:1,458億79百万円 ※事業の実施主体と経費負担 / 給付対象者 ・実施主体は市区町村。実施に要する経費については、国が補助(補助率10/10) ・給付対象者は、基準日(令和8年8月23日)において、住民基本台帳に記録されている者 ・受給権者は、その者の属する世帯の世帯主 ・給付額:給付対象者1人につき10万円 ※給付金の申請及び給付の方法 給付金の申請は次の(1)を基本とし、給付は、原則として申請者の本人名義の銀行口座への振込みにより行う。 (1)オンライン申請方式(マイナンバーカード所持者が利用可能) 給付金を受け取るには、下記のボタンから専用アプリをインストールし、申請手続きを進めてください。 \ 申請手続きはこちらから / [専用アプリをインストールして受け取る](リンク先:hxxps://giftcashd.com) ・アプリから振込先口座と本人情報を入力した上で、本人確認書類(マイナンバーカード)をアップロードし、電子申請(書類郵送は不要) (2)郵送申請方式 (現在受付停止中) サポート情報 | 厚生労働省 Copyright © Ministry of Health, Labour and Welfare, All Right reserved.

▲ 実際に届いたメールの画面(本文は上の再現と同じ内容です)
送信ルートと偽装の見抜き方
差出人の表示名は「厚生労働省」ですが、実際のメールアドレスのドメインは mail34.leng-shui-ta.com でした。日本の省庁の公式サイトは「go.jp」で終わるドメインを使っています。表示名は誰でも自由に書けるので、名前だけで信用しないことが大切です。
「SPFがpassだから安全なのでは?」と思われるかもしれません。ただ、これは「このドメインのメールは、このサーバーから送っていい」という、送信ドメイン自身の申告が合っていたというだけです。今回のように詐欺師が自分のドメインを用意していれば、passになります。厚生労働省のものだという証明にはなりません。DKIM(電子署名)も同じで、署名したのは送信ドメイン自身です。
送信元の 8.230.14.204 は、Googleのクラウドサービス(Google Cloud)上のサーバーで、位置の表示は韓国・ソウル特別市でした。個人の自宅回線ではなく、借りて使うタイプのサーバー(データセンター系)です。このIPのホスト名が送信ドメインと同じ名前になっており、このメールを送るために用意されたサーバーだったとみられます。
なお、ヘッダーには送信者の環境を示す欄があり、17.239.22.136 という別のIPも書かれていました。調べるとアメリカ・カリフォルニア州クパチーノのAppleの回線と表示されますが、Appleが関わっているという意味ではありません。実際の送信元とかみ合っていない記載で、なぜこの値が入っていたのかは分かりません。
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載
💡ここで! ちょっと難しい言葉をやさしく解説
クローキング:見に来た人の環境(パソコンかスマホか、など)によって、表示するページを切り替える仕組みです。調べる人やセキュリティソフトには「何もないページ」を見せ、だましたい相手のスマホにだけ詐欺ページを見せます。
提供元不明のアプリ:Google Playなどの公式ストア以外から入れるアプリのことです。Androidスマホでは初期設定でブロックされていますが、設定で「許可」してしまうと入れられてしまいます。
詳しく調べると分かったこと
① ボタンのリンク先は、送信の約4時間半前に作られたばかり
メール本文のボタンのリンク先 hxxps://giftcashd.com のドメイン情報(Whois)を調べると、登録日は2026年9月28日(UTC 17:13)でした。日本時間では9月29日の午前2時ごろです。メールが届いたのは同じ日の6時36分なので、送信のわずか4時間半ほど前に作られたばかりのドメインだったことになります。過去に登録された記録もありませんでした。

▲ リンク先ドメインのWhois情報(登録日は2026年9月28日)
登録事業者は Aceville Pte. Ltd.、ネームサーバーはDNSPodでした。このドメインが置かれたサーバーは 192.238.160.157(Antbox Networks Limited)で、同じIPに他のサイトが72件同居していました。所在地の表示は、Whois側が中国・甘粛省、ip-sc.netが米国・オクラホマシティと食い違っており、実際の設置場所は断定できません。
② 同じURLなのに、PCとスマホで見える世界が違う
メールのボタンをたどった先の hxxps://hhmjjdfwzx.com/transtioncash/ を、当サイトでPCとスマホの両方で開いて比べました。結果は次のとおりです。
- PC:「Cannot GET /transtioncash/」というエラーだけが表示される
- スマホ(Androidのブラウザ):本物そっくりの「アプリ配布ページ」が表示される

▲ PCで開いた場合:エラーが出るだけで、詐欺サイトは見えない

▲ スマホで開いた場合:Google Play風の偽ページが表示される
スマホ側の画面はGoogle Playにそっくりですが、アドレスバーを見るとGoogle Playのアドレスではありません。公式ストアではない偽の画面です。「ダウンロード50万+」「4.8万件のレビュー」「星4.8」といった数字も、当然あてになりません。アプリ名も開発者名も「特別定額給付金」になっています。
いちばん危ないのは、紹介画像の中に「不明なアプリをインストール」画面が含まれていることです。「この提供元のアプリを許可」というスイッチの場所に赤い矢印まで付けて、「不明なアプリのインストールを許可」させる案内になっていました。公式ストアの審査を通らないアプリを、スマホに直接入れさせるための誘導です。本記事ではこの画面の確認までにとどめ、アプリ本体の解析は行っていません。iPhoneでの表示も未確認です。
③ メールの中に、作業メモが残っていた
メールのソース(HTML)を表示して中身を見ると、簡体字の中国語で書かれた作業メモが消されないまま残っていました。たとえば「『LINE』も『アプリ(App)』に修正した」「公式風の青に変えた」といった内容です(訳は当サイトによるものです)。もともとLINEに誘導する文面のひな形を使い回し、アプリ用に書き換えたとみられます。作業メモまで一緒に送ってくれるとは、ご親切なことです。
④ 「役所の資料風」なのに、つじつまが合わない
- 差出人は「厚生労働省」なのに、本文の書き出しは「内閣府では…」になっている
- 「令和5年11月2日閣議決定」と「令和8年度」の日付が混在している
- 枠の中の名称だけ「特別定額給付金」ではなく「特別定形給付金」。定形郵便ではないのですが…
- 「郵送申請方式」は「現在受付停止中」とされ、アプリだけが唯一の入口に見えるようになっている
- 末尾の英文は「All Right reserved」(正しくは Rights)
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注意点と対処法
このメールを受け取ったら
- ボタンは押さず、返信もせず、そのまま削除して大丈夫です。
- メール内のボタンからアプリを入れる手続きは、内容が給付金であってもなくても、必ず疑ってください。
- 給付金のお知らせが気になったときは、メールではなく、お住まいの市区町村の公式サイトや広報で確認してください。
- 厚生労働省も、「注意喚起情報」のページで、同省を装った不審な電話・メールへの注意を呼びかけています。
- 身近な方、とくにご高齢のご家族にも、このページを共有してあげてください。
もし、アプリを入れたり情報を入力したりしてしまったら
気づいた時点で動けば、被害を小さくできます。責める必要はまったくありません。落ち着いて、次の順番で対応してください。
- 銀行口座やカードの情報を入力してしまった場合は、すぐに金融機関やカード会社へ連絡し、利用の停止や確認を依頼してください。
- 入れてしまったアプリは削除し、設定の「不明なアプリのインストール」の許可を元に戻してください。
- 同じパスワードを他のサービスでも使っている場合は、変更しておくと安心です。
- 不安なときは、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談してください。
まとめ
「厚生労働省」の名前と「1人10万円」という言葉で気持ちを引きつけ、スマホにだけ偽のアプリ配布ページを見せる詐欺メールでした。リンク先のドメインは、送信のわずか4時間半ほど前に作られたばかりです。PCでは何も見えないので、パソコンで確かめても「ただのエラーか」と思ってしまう作りでした。
どんなに本物らしくても、メールのボタンから「専用アプリ」を入れる手続きは行わないでください。この記事のURLを、家族のLINEグループなどで共有してもらえると、被害を防ぐ助けになります。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net 配色テーマ:Forest















