「MyJCB」の詐欺メールなのに中身は終始ETC利用料金の話?テンプレート使い回しの粗さを暴く

夕方になっても真夏の熱気が抜けず、寝苦しい夜が続きますね。そんな中、パソコンやスマホの画面を眺めていて「あれ?」と二度見してしまうような、ちょっと変わった詐欺メールが届きましたのでご紹介します。
| 緊急性レベル | ★★★☆☆ (3/5) |
| 偽装工作精度 | ★★☆☆☆ (2/5) |
■ メールヘッダー解析(送信者情報)
件名:[spam] ご利用料金のお支払い依頼のご案内
表示名:MyJCB(差出人・返信先とも同一の攻撃者ドメイン)
SPF(送信元認証):Pass(ただし攻撃者自身が用意したドメインの認証が通っているだけで、JCBとは無関係)
受信日時:2026年7月24日
※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載です。
ご覧の通り、このメールは真っ赤な偽物です。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。
それでは、実際に届いたメールの内容から見ていきましょう。
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです。リンクは無効化して掲載しています。
ETC利用料金のお支払いについて 平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 このたび、ご登録いただいておりますETCカードの利用料金につきまして、 お支払い期日を過ぎたお取引が確認されております。 つきましては、お心当たりのございますお客さまは、以下のお手続きページより ご確認のうえ、速やかにお支払いくだいますようお願いいたします。 [お支払い手続きはこちら] お支払いが確認できない場合、以降のETCサービスをご利用いただけない場合が ございますので、あらかじめご了承ください。 ご不明な点がございましたら、本メールにご返信いただくか、 お客さまサポートセンターまでお問い合わせください。

実際に受信した詐欺メールの画面。差出人表示と本文の内容がまったく噛み合っていない
お気づきでしょうか。差出人はたしかに「MyJCB」となっているのに、青い帯のタイトルから本文の最後まで、書かれているのは終始「ETC利用料金」の話だけ。「JCB」という文字は本文中に一度も出てきません。おそらくこれは、もともと別のETC事業者を騙るために作られたテンプレートを、送信者名の部分だけ「MyJCB」に差し替えて使い回した結果ではないかと考えられます。本文まで書き換える手間を惜しんだのか、あるいは複数のブランドに一括配信する詐欺キットのブランド差し替え機能がうまく動かなかったのか——真相は攻撃者のみぞ知るところですが、いずれにしても受信者への注意喚起の材料が向こうから増えてくれた形です。
💡ここで! SPFが「Pass」でも安心できないのはなぜ?
SPF(エスピーエフ)とは、「このメールが、送信元として名乗っているドメインから正しく送られたものか」を判定する仕組みです。今回のメールもSPFの判定結果は「Pass(合格)」でした。ところが、これはあくまで「dgujfg.chvire14.comという、攻撃者が自分で用意したドメインからの送信として、辻褄が合っている」ことを意味するだけです。JCBの公式ドメインとは何の関係もありません。「SPFがPassしているから安全」ではなく、「そもそも送信元のドメイン自体が本物かどうか」を確認することが大切です。
■ 送信ルート及びフィッシングサイト詳細解析
送信元IP(Received-SPFヘッダーより特定):34.130.145.28(helo=dgujfg.chvire14.com)
送信元の回線情報(ip-sc.net確認):Google LLC(AS396982 / GOOGLE-CLOUD-PLATFORM)、利用形式:hosting、所在地:カナダ・オンタリオ州トロント、脅威レベル:低
誘導先URL(伏せ字):hxxps://wdkofngl.akdowld[.]eu.cc/
誘導先サーバーIP:104.248.144.233(DigitalOcean, LLC/AS14061/利用形式:hosting)、所在地:シンガポール、脅威レベル:低
送信元(カナダ・Google Cloud)と誘導先(シンガポール・DigitalOcean)で、まったく別のクラウド事業者・地域を使い分けている構成です。いずれもip-sc.net上の脅威レベル表示は「低」ですが、これはIPアドレス自体が誰でも借りられる汎用クラウドサービスのものだからであり、危険性が低いという意味ではありません。実際、Google Chromeのセーフブラウジング機能ではこの誘導先を「危険なサイト」として警告表示していました。

Google Chromeのセーフブラウジング機能による警告画面。フィッシングサイトとして検出済み
警告を解除して進むと、MyJCBの公式ログイン画面を模倣した偽サイトが表示されました。デザインの完成度は本文とは対照的に高く、ID・パスワードの入力欄が丁寧に再現されています。

誘導先で表示された偽のMyJCBログイン画面。サイト自体には「ご注意ください」という本家JCBの注意喚起バナーまで(皮肉にも)表示されている
■ 注意点と対処法
- 差出人名と本文の内容が一致しているか確認する:今回のように、名乗っているブランドと本文の話題がずれている場合は詐欺を強く疑ってください。
- ブラウザの警告は無視しない:「危険なサイト」と表示された場合、そのまま引き返すのが安全です。
- SPF/DKIMがPassでも油断しない:認証結果はあくまで「名乗っているドメイン自体からの送信か」の確認であり、ブランドの正当性を保証するものではありません。
- 公式アプリ・ブックマークから確認:カードの利用状況が気になる場合は、メール内のリンクではなく、公式アプリや正規のブックマークから直接ご確認ください。
本レポートの結論
「MyJCB」を名乗りながら本文は終始ETCの話という、テンプレート使い回しの粗さがそのまま見抜きどころになった詐欺メールでした。SPF・DKIMの認証が通っていても、名乗っているブランドと文面の内容が食い違っていないか、送信元の実態は何かを確認する習慣が被害防止につながります。身近な人が油断してからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで『これ気をつけて!』と共有してあげてください。
Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
配色テーマ:Teal














