「アカウント本人確認書類 提出期限のお知らせ」はAmazonを装うフィッシング——ゼロ幅文字混入とPC/スマホ二重クローキングの手口を解析

暑さの厳しい季節は、身に覚えのない請求や確認メールを見ると、つい焦って手が滑ってしまいがちです。まずはリンクを押さず、深呼吸してから内容を確認しましょう。今日ご紹介するのは、そんな焦りを狙ったAmazonなりすましメールです。
ご覧の通り、このメールはAmazonを装った真っ赤な偽物です。本文中のリンク(「今すぐログイン」)は絶対にクリックしないでください。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。
1. 届いたメールの内容
※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです。
件名:アカウント本人確認書類 提出期限のお知らせ 送信者:Amazon.co.jp(自動送信メール) <kind@kind.hcwdsfc.com> 添付ファイル:AMAzON.co.JP.ejpzww 法令に基づく本人確認書類のご提出について 平素よりアマゾンをご利用いただき、誠にありがとうございます。 このたび、お客様のアカウントにおきまして、ご本人確認書類の情報に不備があることを確認いたしました。 関連法令の定めにより、ご本人確認書類の情報が不足している場合、アカウントの一部機能のご利用が制限される可能性がございます。 つきましては、引き続きサービスを正常にご利用いただくため、お手数ではございますが、2026-07-20までに必要な情報のご登録をお願い申し上げます。 手続き期限:2026-07-20 今すぐログイン ※本お知らせはAmazon.co.jpの自動送信システムにて発信されております。ご返信によるご質問には対応できませんので、ご容赦ください。 ※各種サービスに関するご不明点がございましたら、カスタマーセンターまでお問い合わせください。

▲ 実際に届いたメールの受信画面(件名・送信者・添付ファイル名を確認できる)

▲ メールをテキスト表示に切り替えると現れるゼロ幅文字
添付ファイルAMAzON.co.JP.ejpzwwについては、拡張子が不審なため当サイトでは開封・解析していません。心当たりのない添付ファイルは絶対に開かないでください。
💡ここで! 用語をやさしく解説
ゼロ幅文字:画面には表示されない特殊な文字のことです。文章の途中にこっそり混ぜ込むと、見た目はそのままなのに、迷惑メールを判定するフィルターが単語を正しく認識できなくなり、検出をすり抜けやすくなります。
クローキング:アクセスしてきた機器(パソコンかスマートフォンか)によって、表示するページの内容を変える手口です。調査されやすいパソコンには何も表示せず、スマートフォンの利用者にだけ偽サイトを見せる、といった使い分けに悪用されます。
SPF・DKIM:送信元のなりすましを防ぐための認証の仕組みです。「認証をPass(合格)した」からといって安心はできません。今回のように、攻撃者が用意した無関係なドメイン自身への認証がPassしているだけの場合があるからです。
2. 送信ルート及び偽装判定
■ 送信元の解析
送信者表示:「Amazon.co.jp(自動送信メール)」<kind@kind.hcwdsfc.com>
送信元IP(Received-SPF client-ip):34.106.238.27
SPF:Pass DKIM:Pass(いずれも kind.hcwdsfc.com という送信元ドメイン自身に対する認証結果であり、Amazon公式ドメインへの認証ではありません)
【偽装判定】:
正規のAmazonからのメールは「amazon.co.jp」ドメインから送信されます。本メールの送信ドメイン「hcwdsfc.com」はAmazonと一切関係のない、フィッシング目的で取得されたとみられるドメインです。SPF・DKIMの認証が通っていても、それは「このドメイン自身からは正しく送られている」ことを示すだけで、「Amazon本物である」ことは何も保証しません。この点を混同すると、一見安全に見えるメールに騙されてしまいます。
発信元ロケーション解析:
Google Cloud Platform(米国・ユタ州ソルトレイクシティ)のサーバーから送信されていました。
Googleマップ:【位置情報を確認する】
※IPアドレスの割り当ておよびロケーション情報は調査時点のものであり、変更される場合があります。
それにしても、「kind.hcwdsfc.com」というAmazonとは何の関連もないドメイン名で「Amazon.co.jp」を名乗ってしまうあたり、偽装の詰めが甘いと言わざるを得ません。ゼロ幅文字やクローキングには手間をかけているのに、肝心の送信ドメインで馬脚を露わしているのは、なんとも惜しい話です。
3. フィッシングサイト詳細解析——PC/スマホで表情を変える二重クローキング
■ フィッシングサイト詳細解析
誘導先URL(伏せ字):hxxps://zh-x-okooo[.]com/
リンクドメイン:zh-x-okooo.com
サイトサーバーIP:43.167.161.177
ホスティング事業者:Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited(Tencent Cloud)
ロケーション:日本・東京都渋谷区
Googleマップ:【Googleマップで表示】
【サイトの状態】:ウイルスバスター クラウドが「このWebサイトは、安全ではない可能性があります。脅威の種類:フィッシング」として接続をブロック済みです。

▲ ウイルスバスター クラウドによる警告画面。「脅威の種類:フィッシング」と明示されている
今回の誘導先は、パソコンとスマートフォンでまったく異なる顔を見せる二重クローキングを実装していました。
【パソコンでアクセスした場合】
トップページ(hxxps://zh-x-okooo[.]com/)にアクセスすると「404 Not Found」が表示され、ページが存在しないかのように振る舞います。セキュリティ調査者や解析ツールの多くはパソコン環境からアクセスするため、これを見て「もう閉鎖された」と誤認させる狙いがあるとみられます。

▲ パソコンからアクセスすると表示される「404 Not Found」画面
【スマートフォンでアクセスした場合】
一方、メール本文のリンク先(hxxps://zh-x-okooo[.]com/9wh9Va35be.museum)にスマートフォンからアクセスすると、「サイトへの接続が安全かどうか確認しています」という偽のセキュリティ確認画面が表示されます。「盾アイコンを3つタップしてください」という指示に従わせることで、自動解析ツール(ボット)による検出を回避しつつ、人間の利用者だけを先の画面に誘導する仕組みです。今回確認した際は、この確認画面を経た先で最終的にYouTubeへリダイレクトされました。

▲ スマートフォンでアクセスした際に表示される偽の「セキュリティ確認」画面(盾アイコンをタップさせる仕組み)
解析を試みるパソコンには何も見せず、スマートフォンの利用者だけを選んで別の画面を見せる——攻撃者が調査の目を意識して手口を練り上げていることがうかがえます。最終的にYouTubeへ飛ばされて終わるあたり、肝心の詐取用フォームにはまだ辿り着けていない可能性もありますが、油断は禁物です。同種の手口は日々更新されており、別の観測タイミングでは実際の偽ログイン画面が表示される恐れも十分にあります。
4. 注意点と対処法
■ 注意点と対処法
- 本文中のリンクをクリックしない:「今すぐログイン」のリンク先は情報を盗むための偽サイトです。
- 添付ファイルを開かない:拡張子が不審な添付ファイル(.ejpzwwなど)は絶対に開かないでください。
- 公式サイト・公式アプリから確認:アカウントの状態が気になる場合は、メール内のリンクではなく、必ずブックマークまたは公式アプリからAmazonにアクセスして確認してください。
- 送信元ドメインを確認する習慣を:表示名が「Amazon.co.jp」でも、実際のメールアドレスのドメインが「amazon.co.jp」以外であれば、そのメールは偽物です。
- 公式注意喚起の参照:Amazon公式:不審なメール・偽サイトにご注意ください
万が一、リンク先で情報を入力してしまった場合は、慌てず速やかにAmazonの公式サイトからパスワードを変更し、クレジットカードを登録している場合はカード会社にもご連絡ください。
本レポートの結論
「アカウント本人確認書類 提出期限のお知らせ」を名乗るこのメールは、Amazonとは無関係のドメインから送信されたフィッシングメールです。ゼロ幅文字によるフィルター回避や、パソコンとスマートフォンで表情を変えるクローキングなど、解析を意識した手口が使われていました。身近な人がリンクをクリックしてからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで「これ気をつけて!」と共有してあげてください。
調査日:2026年7月20日 / Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net
配色テーマ:Teal
















