【調査報告】東京ガス「パッチョポイント」フィッシング詐欺3兄弟──焦り・不安・お得感を使い分ける同一キットの正体

HL-META: date=2026-06-20 | brand=東京ガス | sender_geo=不明(GCP) | site_geo=不明(PC側Cloudflare/スマホ側Cloudflare) | spf=pass | dkim=pass | cloaking=yes

【調査報告】東京ガス「パッチョポイント」フィッシング詐欺3兄弟の正体

Heartland-Lab (ハートランド・ラボ) 専門調査レポート

今回ご紹介するのは「東京ガス」のmyTOKYOGAS会員向けポイント「パッチョポイント」を騙るフィッシングメールです。実は同じ日に、文面の違う3パターンが届きました。「年度間もなく締切」「凍結解除」「dポイント交換キャンペーン」と、それぞれ異なる切り口で不安や期待を煽ってきますが、調査の結果、送信元のIPアドレスは3通とも同じブロックから送られていたことが分かりました。東京ガスをお使いの方はもちろん、「パッチョポイント」という言葉に聞き覚えのある方はぜひ最後まで読んでみてください。

※重要:HTMLメールとして配信されており、開封するだけでアクティブなアドレスとして攻撃者のリストに登録されるリスクがあります。

緊急性レベル ★★★★☆ (4/5)
偽装工作精度 ★★★★★ (5/5)
同一キット確度 ★★★★★ (5/5)

ご覧の通り、このメールは公式サイトを装った真っ赤な偽物です。被害を未然に防ぐため、この解析結果を家族のLINEグループに転送して注意喚起してください。

この手口が特に厄介なのは、「パッチョポイント」自体は東京ガスの実在する正規サービスであり、dポイントへの1:1交換も本当に存在する制度だという点です。普段からmyTOKYOGASを利用している方ほど「ああ、知ってるやつだ」と油断してしまいやすく、ニュースで「フィッシング詐欺に注意」と聞いても「自分には関係ない作り話」とは思いにくい構造になっています。実在する制度に便乗するからこそ、警戒心が薄れてしまうわけです。

■ 3通の比較

件名 送信元ドメイン 送信元IP 心理アプローチ
パッチョポイント年度間もなく締切のお知らせ fuzzlrv.com 35.217.95.200 焦り(締切が迫っている)
パッチョポイント凍結解除のお知らせ(要対応) mf5256.com 35.217.79.35 不安(何か悪いことが起きた)
パッチョポイント dポイント交換キャンペーンのご案内 534g2l.com 35.217.70.175 お得感(キャンペーンに乗りたい)

送信元ドメインの文字列はそれぞれ異なる無意味な英数字の組み合わせですが、送信元IPアドレスの最初の2オクテット「35.217」は3通とも完全に一致しています。ドメインは使い捨てながら、裏側のクラウドインフラ(Google Cloud Platform)の本体だけは同じものを使い回している証拠です。

3通の中でも、実際にフィッシングサイトの挙動まで確認できたのが「dポイント交換キャンペーン」を求めるメールでした。以下、このメールを軸に詳しく見ていきます。

■ メールヘッダー解析(送信者情報)

件名:[spam]【東京ガス】パッチョポイント dポイント交換キャンペーンのご案内

送信者名:“東京ガス くらしサービス”

送信元アドレス:XNPNIN@sbzkjpdr.orders.534g2l.com

送信元IPアドレス:35.217.70.175(Google Cloud Platform)

受信日時:2026年6月20日 11:03頃

※メールヘッダー詳細は個人情報保護のため非掲載

※以下の内容は届いた詐欺メールを技術検証のために忠実に再現したものです。


TOKYO GAS

パッチョポイント dポイント交換キャンペーン

期間限定

(宛名部分は伏せ字)様

いつも東京ガスをご愛顧いただき、厚く御礼申し上げます。

このたびmyTOKYOGASでは、パッチョポイントの有効期限が近い会員様を対象に、dポイントへの交換キャンペーンを実施中です。この機会にぜひ、貯まったポイントを普段のお買い物で使えるdポイントに交換してください。

dポイント交換キャンペーン

パッチョポイント
1 pt = 1 dポイント

交換レート1:1。dポイントは全国の加盟店・コンビニ・ドラッグストアなどでご利用いただけます。

交換手続きは3ステップで完了。とても簡単です。

1 ログイン → 2 dポイント選択 → 3 交換完了

なお、パッチョポイントは毎月のガス使用量を確認するだけで獲得できるお手軽なポイントです。失効する前に、ぜひこの機会にdポイントへ交換してご活用ください。

dポイントに交換する myTOKYOGASにログインして今すぐ交換

※パッチョポイントのdポイント交換は1:1レートで実施中です。
※dポイントは交換後すぐにご利用いただけます。
※有効期限を過ぎたポイントは交換できません。お早めにお手続きください。
※本メールはポイント保有会員様への自動配信です。


東京ガス株式会社
myTOKYOGAS パッチョポイント事務局

© Tokyo Gas Co., Ltd. All Rights Reserved.

この文面で巧妙なのは、「毎月のガス使用量を確認するだけで獲得できるお手軽なポイントです」と、いかにも本物の制度説明らしい一文を挟んでいる点です。実際にパッチョポイントは本当にガス使用量確認で貯まる制度なので、この一文自体に嘘はありません。本物の説明文に「失効する前に」「今すぐお手続きを」という煽り文句を混ぜ込むことで、メール全体の信頼性を底上げしているわけです。「3ステップで完了。とても簡単です」というハードルの低さの強調も、深く考える前に手を動かさせるための定番の手口です。

■ 送信ルート及び偽装判定

Receivedヘッダー解析(サーバー通過証明):
Received-SPF: Pass (sender SPF authorized) identity=mailfrom; client-ip=35.217.70.175; helo=orders.534g2l.com

【偽装判定】:
SPF・DKIMともにPassと表示されていますが、これは攻撃者自身が用意したクラウドインフラからの送信として正規に見えるだけです。送信元ドメイン「534g2l.com」は東京ガスの正規ドメイン(tokyo-gas.co.jp)とは一切関係がありません。差出人名は「東京ガス くらしサービス」となっていますが、これも実在の部署名を装った肩書きにすぎません。

発信元ロケーション解析:
IPアドレス35.217.70.175の地理的情報は【ip-sc.netで確認する】からご覧いただけます。ロケーションデータは日々変化する可能性がありますので、あくまで調査時点の参考情報としてご覧ください。

残り2通(「年度間もなく締切」「凍結解除」)も、文面の構成・末尾の署名(「東京ガス株式会社 myTOKYOGAS パッチョポイント事務局」)・「わずか1〜3ステップで完了」という言い回しまで、ほぼ同じ型を使っていました。先ほどの比較表の通り、送信元IPの上位ブロックも完全に一致しており、同じ攻撃者が一つのテンプレートを基に、心理アプローチだけを差し替えて複数パターンを同時展開していることがうかがえます。

■ フィッシングサイト詳細解析(デバイス別の挙動)

PCからアクセスした場合の誘導先(伏せ字):hxxps://login.gd-shd.com/?rofcaYHpc3MbGqis3lHzluTd (一部伏字)

PCサイトサーバーIP:172.67.143.220(Cloudflare経由)【ip-sc.netで確認する】

結果:Chromeのセーフブラウジング機能が「危険なサイト」と警告し、Google公式にフィッシングサイトとして検出済みであることが表示されました。


スマートフォンからアクセスした場合の誘導先(伏せ字):hxxps://login.fengluyishu.com/home (一部伏字)

スマホサイトサーバーIP:172.67.144.119(Cloudflare経由)【ip-sc.netで確認する】

結果:本物のmyTOKYOGASを模した「ポイント受取」ページに到達しました。「東京ガスポイントプログラムにご参加いただき、誠にありがとうございます」と表示され、「1,000〜5,000ポイント」のご利用特典をエサに、携帯電話番号によるご本人確認を求める「受け取る」ボタンが設置されていました。

これも今日他のブランド(Netflix)の記事でご紹介した「クローキング」と呼ばれる、アクセスしてきた端末によって表示内容を切り替える技術です。パソコンからのアクセスには既にGoogleにフィッシングサイトとして検出済みの警告を出してすり抜けを諦めさせ、スマートフォンには本物そっくりのポイント受取ページを表示して、実際の情報収集はそちら側で行う、という分業体制になっています。「パソコンでブロックされたから安全」と思い込むのは禁物です。実際の被害者の多くは、スマートフォンでメールを確認してそのままタップする層だと考えられます。

■ 注意点と対処法

  1. URLをクリックしない:「dポイントに交換する」などのリンク先は情報を盗むための偽サイトです。
  2. myTOKYOGASに直接ログインして確認:パッチョポイントの状態は、メール内のリンクではなく、ブックマークや公式アプリから直接myTOKYOGASにログインして確認してください。
  3. 「本物の制度に似ている」という油断に注意:パッチョポイントやdポイント交換自体は実在するサービスですが、それとメールの正当性は無関係です。制度の実在性と、目の前のメールが本物かどうかは別問題です。
  4. 「ブロックされた=安全」と思わない:パソコンでアクセスしてエラーが出ても、スマートフォンでは本物そっくりの偽ページが表示される場合があります。携帯電話番号などの情報は絶対に入力しないでください。
  5. 公式注意喚起の参照:東京ガス公式「フィッシング詐欺(東京ガスを名乗るメールやSMS)にご注意ください」

本レポートの結論

今回確認した3通は、いずれも東京ガスの実在するサービス「パッチョポイント」に便乗し、焦り・不安・お得感という異なる心理アプローチを使い分けながら、同じクラウドインフラ(送信元IPの上位ブロックが一致)から配信されていました。さらにdポイント交換キャンペーン版の誘導先では、PCとスマートフォンで表示内容を切り替えるクローキングまで確認され、手間のかけ方は侮れません。本物の制度説明を交えてくる「半分本当・半分嘘」の作りこそが、この手口の一番厄介な部分です。身近な人が騙されてからでは手遅れです。この記事のURLをコピーして、家族のLINEグループで「これ気をつけて!」と共有してあげてください。

Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
根拠データ参照元:ip-sc.net | パッチョポイントとdポイント交換について(dポイントクラブ公式)

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