どうして私のメールアドレスをご存じなの?
マスターカードから緊急対応が必要だとの連絡がメールで届きました。
どうやら私のカードで不審な取引があったらしく即座にリンクから確認手続きを行うよう
せかすように促しています。
でもそんなのを一方通行の連絡であるメールで通知してくるなんて少々不信です。
それにどうしてマスターカードさんが私のメールアドレスをご存じなのでしょうか?
これ絶対におかしいですよね?!
ってことでこのメールは詐欺メールの疑いがあります。
因みにマスターカードさんではこのような注意喚起がオフィシャルサイト内に掲載されています。
そこには『カード会社及び金融機関から、口座や個人情報をたずねるメールを送ることは一切ありません』
と書かれていました。
では、このメールもしっかり解体しその全容を詳しく見ていきましょう!
まずはプロパティーから見ていきましょう。
件名は『[spam] カード利用の緊急停止に関する重要通知』
ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。
この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。
このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている
ものは全て迷惑メールと判断されたもの。
うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと
否応なしに『迷惑メール』フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。
差出人は
『"マスターカード" <contactless@mastercard.com>』
皆さんはご存じでしょうか?
この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。
ですから、ここは信用できない部分です。
確かに”mastercard.com”マスターカードさんのドメインですが、それは本家アメリカの
マスターカードのドメインであって、国内のマスターカードさんの公式ドメインは
オフィシャルサイトのURLから読み取れるように"mastercard.co.jp“です。
故にこのメールアドレスは間違っています!
本当は全然違うドメイン
では、このメールが悪意のあるメールであることを立証していきましょうか!
まず、このメールのヘッダーソースにある”Received”を確認し調査してみます。
私が愛用のThunderbirdの場合、『表示(V)』⇒『メッセージのソース(O)』と進むと見られますよ。
これがそのソースを抜き出したもの。
重要なのは下から一つ目の”Received”です。
Received:『from mail1.wyystores9723.com (hwsrv-1130794.hostwindsdns.com [104.168.170.106])』 |
ここに掲げた”Received”はこのメールが差出人から送信された後最初に通過したサーバーのもので
すなわち差出人が使った送信サーバーの自局情報です。
末尾の4つに区切られた数字の集まりはIPアドレスと呼ばれるいわばインターネット上の住所や電話番号で
同じ数字の集まりは世界中に1つしかありません。
でもこの数字の集まりじゃあまりにも煩雑でわかりにくいので、それに文字を割り当て分かり易くした
ものがドメインと呼ばれるものです。
このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば
メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法
違反となり処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰する
では、メールアドレスにあったドメイン”mastercard.com”が差出人本人のものなのかどうかを
調べてみます。
これがドメイン”mastercard.com”を割当てているIPアドレスの情報です。
これによると”216.119.218.99”がこのドメインを割当てているIPアドレス。
本来このIPは”Received”のIP”104.168.170.106”と同じ数字の羅列になるはずですが、それが全く異なるので
このメールのドメインは”mastercard.com”ではありません。
これでアドレスの偽装は確定です!
”Received”に記載されているIPアドレス”104.168.170.106”は、差出人が利用したメールサーバーの情報で
これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。
このIPアドレスを元に送信に使われた回線情報とその割り当て地を確認してみます。
地図に立てられたピンの位置は、アメリカのシアトル近郊。
そして送信に利用されたのもシアトルに拠点を置く『Hostwinds LLC.』と言うプロバイダーです。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようですね。
因みにこのIPアドレスには”hwsrv-1130794.hostwindsdns.com”なんてドメインが割当てられています。
このドメインは迷惑メールや詐欺メールに多く使われていることが知られています。
リンク先は未防備に放置プレイ中
では引き続き本文。
重要:このメッセージは緊急性が高いため、速やかにご確認ください。
お客様のMasterCardカードに関する重大な問題が発生しています。
我々は、お客様のカード利用に関して、緊急の認証が必要な不審な取引を検知しました。このままの状況でのカード利用は非常に危険です。したがって、即座に以下の手続きを完了してください。
■ カード利用の確認手続きはこちら
この手続きが完了するまで、あなたのカードは一部またはすべての取引に制限がかけられます。我々の決定に反論することはできません。お客様の安全と保護のため、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
もしもこの通知に対する返信がない場合、カードの利用停止は継続され、新たな不正利用の発生による損害を回避するため、我々は法的手段を検討せざるを得ません。その責任は全てあなたに帰属します。
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■ 発行者Mastercard
東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー16階
────────────────────────────────────
この通知は非常に深刻な状況を反映しています。ご質問や疑問がございましたら、速やかにご連絡ください。 |
それにしてもこのメール、ものすごく煽っていますね。
詐欺メール免疫のない方なら焦ってリンク押しちゃいそうです…(^^;)
このメールは詐欺メールですから詐欺サイトへのリンクが付けられています。
そのリンクは『■ カード利用の確認手続きはこちら』って書かれたところに付けられていて、
そのリンク先のURLとトレンドマイクロの『サイトセーフティーセンター』での
危険度評価がこちらです。
未評価ってヤバッ!
早急に評価を変更していただけるように私から変更の申請を行っておきます。
このURLで使われているドメインは”wystores4765.com”
このドメインにまつわる情報を取得してみます。
このドメインは『PrivacyGuardian.org』と言うドメイン取得代行サービスを通じて取得されたものです。
この『PrivacyGuardian.org』は、匿名でレジストラを通じてドメインを取得するサービスを行っており
サイバー犯罪の温床になると問題視されています。
このドメインを割当てているIPアドレスは”204.44.95.58”
このIPアドレスを元にサイト運営に利用されているホスティングサービスとその割り当て地を確認してみます。
地図に立てられたピンの位置は、アメリカのロサンゼルス近郊。
そして利用されているホスティングサービスもアメリカに拠点を置く『QuadraNet Enterprises LLC』
この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。
トレンドマイクロの『サイトセーフティーセンター』での危険度評価からすると、リンク先の
詐欺サイトは、どこからもブロックされることなく無防備な状態で放置されていると思われます。
そんなサイトに、調査を目的で安全な方法を利用して訪れてみることにします。
おっと、ど初っ端からカード情報を聞いてきましたよ!(;^_^A
これはいかにもおかしいです。
本人確認とかしなくてよいのでしょうか?(;’∀’)
まとめ
元来マスターカードとはVISAカードと同様に、自社でカード発行は行わずにカード会社に決済システムの
提供をしているブランドです。
てなわけで、自社ではカード発行は行わずクレジットカードの発行は加盟店が行うものなので
マスターカードからこのようなメールが届くことは絶対にあり得ないお話です。
恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの
フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。
次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |