迷子メールから
この手のメール多くないですか?
こんなメールがメールボックスに2通。
書かれているのは全く同じ。
うちのメールの”mail”アカウントと"admin”アカウント宛に来ていました。
恐らくこのアカウントなら存在するだろうとあてずっぽに送ってきたものと思われますが、どちらも
存在しないアカウントなので、迷子になってサーバーに残されていたものです。
では、このメールを解体し詳しく見ていきましょう!
まずはプロパティーから見ていきましょう。
件名は
「メールボックスがいっぱいです」
この時代、メールがなければ死活問題。
メールボックスが限界だなんて受信者にしてみればびっくりしちゃいますよね。
でも、ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。
差出人は
「"Support *****.***" <mail@creaforcom.fr>」
皆さんはご存じでしょうか?
この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。
ですから、ここは信用できない部分です。
”*****.***”部分にはうちのドメイン名が書かれています。
ところで”creaforcom.fr”なんてフランスの国別ドメインを使ったメールアドレスってどなたでしょうね?
メールアドレスの偽装は確定
では、このメールがフィッシング詐欺メールであることを立証していきましょうか!
まず、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。
私が愛用のThunderbirdの場合、「表示(V)」⇒「メッセージのソース(O)」と進むと見られますよ。
ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。
Return-Path: 「bounces+3823739-1315-mail=*****.***@sendgrid.creaforcom.fr」
”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される
メールアドレスです。
”*****.***”部分は、差出人名のようにうちのドメイン名が書かれています。
一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に
偽装可能なフィールドなのであてにできません。
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Message-ID:「18102023011117EE554E273F$BE2AA2EDAD@creaforcom.fr」
”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。
このIDは世の中に1つしかありません。
”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。
ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。
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Received:「from wrqvftnv.outbound-mail.sendgrid.net (wrqvftnv.outbound-mail.sendgrid.net [149.72.247.40])」
”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む
自局のホスト情報です。
ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。
すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。
記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。
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この差出人は、あくまで自分のドメインは”creaforcom.fr”と言い張るようですね。
ならばその鼻っ柱をへし折ってやりましょうか!
先に書いた通り”Received”に記載のIPアドレスは差出人が利用したメールサーバーのもの。
このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば
メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法
違反となり処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰する
では、メールアドレスにあったドメイン”creaforcom.fr”について調べてみます。
そして”213.186.33.2”がこのドメインを割当てているIPアドレス。
本来同じでなけれならない”Received”のIPアドレスが”149.72.247.40”ですから全く異なります。
これでアドレス偽装は確定。
この方にはしっかり罪を償っていただかなければなりませんね!
このIPアドレスについて逆引きしてみます。
するとこのIPアドレスには”wrqvftnv.outbound-mail.sendgrid.net”というドメインが
割り当てられているようです。
調べてみるとこのドメインはアメリカのクラウドコミュニケーション企業「Twilio(トゥイリオ)」が
所持しているようです。
恐らくそこのサーバーを利用してこのメールを送ってきたようですね。
「フィールド御三家」の中で一番重要なのは”Received”
これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。
”Received”のIPアドレス"149.72.247.40”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
IPアドレスを元にしているので、かなりアバウトな位置であることをご承知いただいた上でご覧ください。
ピンが立てられたのは、アメリカコロラド州デンバー付近です。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。
リンク先は微笑みの国へ接続された
では引き続き本文。
完全なメールボックスメモリスペースがほぼ満杯であるため、
11つ の受信メールが返されました。
メールボックスの記憶域を増やすには、
以下のリンクをクリックしてプロセスを完了してください
https://dgi.edu.bt/kags/#mail@*****.*** |
「完全なメールボックスメモリスペースがほぼ満杯」って意味は確かに分かりますが
日本語としてどうでしょうか?
このメールは、詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。
そのリンクは、本文末尾に直書きされていて、リンク先のURLとトレンドマイクロの
「サイトセーフティーセンター」での危険度評価がこちらです。
えっ、まさかの安全宣言?
これは見逃すことは到底できません。
このURLで使われているドメインは、サブドメインを含め”dgi.edu.bt”
このドメインにまつわる情報を取得してみたのですが、これ以外の詳しい情報を取得することは
できませんでした。
このドメインを割当てているIPアドレスは”202.144.128.131”
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
こちらもIPアドレスを元にしているので、アバウトな位置であることをご承知いただいた上で
ご覧ください。
ピンが立てられのは、幸せの国ブータンの首都ティンプー付近。
この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。
「サイトセーフティーセンター」での評価から想像すると、どこからもブロックされることなく
無防備に放置されているであろうリンク先の詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。
そうか、このメールはサーバーを乗っ取るためのものか。
開いたのは、京都にある大手レンタルサーバーの「カゴヤ・ジャパン株式会社」が運営する
レンタルサーバーへのログインページを模したもの。
このレンタルサーバーへのログインアカウントの情報を取得することを目的として
このメールを、サーバー管理者に届くように”mail”や”admin”アカウント宛に送ってきたんですね。
まとめ
このメールの目的はサーバー乗っ取り。
運悪く乗っ取られたサーバーを使い、このような詐欺メールを送り付けたり詐欺サイトを構築したりして
悪さを働くつもりなのででしょうね。
恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの
フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。
次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |