「重要」と書かれたメールに限って 全く身に覚えの無い暗号通貨サイトから本人確認を促すメールが届きました。 私、どこの暗号通貨も使っていませんが…  「最近の各国の法律や政策の変化により、すべてのユーザーは(完全な)KYC認証を受けなければなりません」 なんて無理くりな理由付けですね。 「KYC認証」とは、単純に「本人確認」の事。 なんても横文字にして受信者に不安を植え付けようとするのは奴らのいつもの手口です。 では、このメールを解体し詳しく見ていきましょう! まずはプロパティーから見ていきましょう。 件名は 「[spam] 【重要なお知らせ】Trust Wallet ご利用確認のお願い」 ご承知の通り件名欄は、差出人が書き込むものですからいくらでも適当に記入できます。 ほんと、件名に「重要」と書かれているメールにロクなメールはありませんね。 この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。 このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている ものは全て迷惑メールと判断されたもの。 うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと 否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。 差出人は 「”Trust Wallet” <Web@trustwallet.com>」 皆さんはご存じでしょうか? この差出人欄は完全に自己申告制で、誰でもウソが書けるフィールド。 ですから、ここは信用できない部分です。 上手く化けたつもりしょうか?… ”trustwallet.com”は確かに「Trust Wallet」のドメインですが、件名に”[spam]”とあるので このメールは詐欺メール故に偽装の疑いがあります。 その辺りを含め、次の項で見ていくことにしましょう。 偽装の疑いは確信に では、このメールがフィッシング詐欺メールであることを立証していきましょうか! まず、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。 私が愛用のThunderbirdの場合、「表示(V)」⇒「メッセージのソース(O)」と進むと見られますよ。 ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。 Return-Path: 「Web@trustwallet.com」 ”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される メールアドレスです。 一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に 偽装可能なフィールドなのであてにできません。 | Message-ID:「C31B178B8A27FAE3FBC7EA303A7235A6@qccd.com」 ”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。 このIDは世の中に1つしかありません。 ”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入りますが おやおや?”qccd.com”なんてドメインが出てきましたよ。(笑) | Received:「from qccd.com (unknown [59.53.144.132])」 ”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む 自局のホスト情報です。 ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。 すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。 記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。 ここにも”qccd.com”なんてドメインが表示されていますね。 | もうこの時点でほぼメールアドレスの偽装は確定ですが、もう少し詳しく調べ確信に迫りたいと思います。 メールアドレスの@より後半はドメインと呼ばれる部分で、ネットワーク上の機器に割り当てられる インターネット上の住所であるIPアドレスを分かりやすくするために文字を割り振ったもの。 このドメインを調べることで、その持ち主の割出しや割当てているIPアドレスを調べることで、 その利用地なども調べることが可能です。 先に書いた通り”Received”に記載のIPアドレスは差出人が利用したメールサーバーのもの。 このIPアドレスが差出人のメールアドレスのドメインに割当てられているものと一致すれば メールアドレスの偽装は無かったことが証明されますが、そうでない場合、特定電子メール法 違反となり処罰の対象とされます。 ※特定電子メール法違反 ・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金 ・法人の場合、行為者を罰する では、メールアドレスにあったドメイン”trustwallet.com”について調べてみます。  ”104.20.73.207”がこのドメインを割当てているIPアドレス。 本来同じでなけれならない”Received”のIPアドレスが”59.53.144.132”ですから全く異なります。 これでアドレス偽装は確定。 この方にはしっかり罪を償っていただかなければなりませんね! 「フィールド御三家」の中で一番重要なのは”Received” これを紐解けば差出人の素性が見えてきます。 ”Received”のIPアドレス”59.53.144.132”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。 このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。  IPアドレスを元にしているので、かなりアバウトな位置であることをご承知いただいた上でご覧ください。 ピンが立てられたのは、中国 江西省 南昌市付近の川のほとりです。 このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。 偽サイトは英語表記 では引き続き本文。 Trust Wallet利用いただき、ありがとうございます。 これは、お客様のTrust Walletアカウントに関する1つまたは複数のウォレットにかかる問題を通知するための自動Eメール通知です。 最近の各国の法律や政策の変化により、すべてのユーザーは(完全な)KYC認証を受けなければなりません。本システムは、少なくとも1つのウォレットが認証プロセスが正しく完了されしていないことを示しております。 下に表示されているボタンを押して弊社のウェブサイトで簡単に認証を完了することができます。接続していただくと、ウォレットとスマートコントラクトの認証が自動的に行われます。 | このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。 そのリンクは「Login Wallet」って書かれた青いボタンのところに張られていて、リンク先の URLがこちらです。  因みに本物の「Trust Wallet」のURLは”https://trustwallet.com/”です。 そして”.cc”は、オーストラリア領ココス諸島に割り当てられている国別ドメインで 格安で手に入れられるため、使い捨てが容易なためサイバー犯罪でよく使われているものです。 このサイトの危険性をトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」で確認してみます。  このように既に危険サイトと認識されており、ブラックリストに登録済み。 そのカテゴリは「フィッシング」と書かれています。 このURLで使われているドメインは、”www.trustswallet.cc” このドメインにまつわる情報を取得してみます。  どうやら申請は、中国北京からのようです。 このドメインを割当てているIPアドレスは”103.73.161.166” このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。  こちらもIPアドレスを元にしているので、アバウトな位置であることをご承知いただいた上で ご覧ください。 ピンが立てられのは、香港付近。 この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。 危険と言われると見に行きたくなるのが人情と言うもの。 安全な方法でリンク先の詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。 まず真っ先にChromeがブロックしてきました。  構わず先に進んでみると開いたのは英語のこのようなページ。 もちろん偽サイトですから絶対にログインしないでください!  本物の「Trust Wallet」に行ってみると、ちゃんと日本語のページが用意されていました。  まとめ 偽サイトへログインさせることにより、「Trust Wallet」のアカウント情報を詐取し、なりすまし詐欺を はたらくのが目的です。 どこかで拾ってきたメールアドレスリストへ向け機械的に適当にこのメールを送ったものと推測されます。 恐ろしいことに、今、こうしている間にも大量のフィッシング詐欺メールが発信されたくさんの フィッシング詐欺サイトが作られ消滅していきます。 次から次に新種のメールが届くので常に意識して被害に遭わないようご注意ください。 いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |