「緊急に凍結」なんて言葉使う?
「オリコカード」からこのようなメールが届きました。
第三者不正利用の疑いでアカウントが制限されているようです。
私、オリコカード持っていませんがね…(笑)
もちろんこのメールはフィッシング詐欺メール!
では、このメールもプロパティーから見ていきましょう。
件名は
「【重要】ORICOアカウントは緊急に凍結されていますのでご注意ください」
「緊急に凍結」なんて言葉使いますかね?
これはきっと機械翻訳で日本語化されたものだと思われます。
ということは、差出人は日本の方ではないと言えそうですね!
この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。
このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている
ものは全て迷惑メールと判断されたもの。
うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと
否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。
差出人は
「"Oricoカード" <noreply@orico.co.jp>」
”orico.co.jp”は確かに「」のドメインですが、件名の「緊急に凍結」なんて言葉を見せられた後では
全く信じられませんね。
その辺りを含め、次の項で見ていくことにしましょう。
アドレス偽装を確定させる
では、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。
ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。
Return-Path: 「noreply@orico.co.jp」
”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される
メールアドレスです。
一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に
偽装可能なフィールドなのであてにできません。
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Message-ID:「20220523055515775567@orico.co.jp」
”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。
このIDは世の中に1つしかありません。
”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。
ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。
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Received:「from noreply0.orico.co.jp (unknown [45.144.2.165])」
”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む
自局のホスト情報です。
ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。
すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。
記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。
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まずは、”orico.co.jp”について情報を取得してみます。
このドメインを割当てているIPアドレスが”Received”に記載されているものと同じなら
差出人のメールアドレスだと認めますが、そうでない場合、特定電子メール法違反となり
処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下の罰金
さて、どう出るのでしょうか?
(IPアドレスが抽出しやすいよう”www.”を付加しています)
”118.103.122.145”がこのドメインを割当てているIPアドレス。
”Received”に書かれているのが”45.144.2.165”ですから全く異なるので、この方はやはり
アドレス偽装。
しっかり罪を償っていただきましょう!
今度はこのIPアドレスからドメインを逆引きしてみます。
どうやらこのには”spo-gard.ru”と言うロシアのトップレベルドメインが割当てられているようです。
”Received”のIPアドレス”45.144.2.165”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
ピンが立てられたのは、こちらもロシアでモスクワ付近です。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。
アクセスが拒否されてしまった
では引き続き本文。
本メールは重要なお知らせのため、メール配信を希望されていない方にもお送りしております。
当お客様のアカウントが許可されていない第三者によって悪用されていることを検出しました
セキュリティ上の理由から、初めてアカウントの使用を制限しました。
このメールを受信してから24時間以内に、以下のリンクをクリックして、個人アカウントの対応する
情報をできるだけ早く確認してください。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
当社では、オンラインショッピングを安心してご利用いただくため、本人認証サービスを導入しております。
本人認証サービスでは、お客さまのご利用状況に応じて「パスワード」を入力することで本人認証を行い、
第三者の「なりすまし」による不正利用を防ぎます。
「パスワード」として、「ワンタイムパスワード」または「eオリコのログインパスワード」のどちらかを
ご入力いただきますが、当社ではよりセキュリティ性の高い「ワンタイムパスワード」のご利用を
推奨しております。 |
何かごちゃごちゃ書いてありますが、このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへの
リンクが付けられています。
そのリンクは「本人認証サービス・ワンタイムパスワードについてはこちら>」って書かれたところに
張られていて、リンク先のURLがこちらです。
このURLで使われているドメインは”orico.co.jp”ではなく”yhxxgqw.cn”ですのでお間違いないように。
中国のドメインですね!
このサイトの危険性をトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」で確認してみます。
おっと、まだ「未評価」のようです。
このようなフィッシング詐欺サイトがこの評価ではあまりにも危険すぎます。
評価を変更していただけるよう早速申請しておきます。
このURLで使われているドメインは、サブドメインを含め”www2.orico.co.jp.yhxxgqw.cn”
このドメインにまつわる情報を取得してみます。
申請者は、私には読めない文字を含む漢字3文字の氏名の方。
このドメインは、中国のIT企業のアリババに委託されていますから、どこの国の方かは
おおよそ想像つきますよね?
このドメインを割当てているIPアドレスは”23.95.130.173”
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
ピンが立てられのは、ニューヨークのバッファロー付近。
この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。
安全な方法でリンク先の詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。
アクセスが拒否されてしまったようです。
「HTTP ERROR 403」と書かれていますから、ページが存在するものの、特定のアクセス者に
ページを表示する権限が付与されず、アクセスが拒否されたことを現わしています。
詐欺サイトは、捜査の手が及ぶのを恐れ、えてして時々姿をくらまします。
こうすることで少しでも捜査の手から逃れようとしているのです。
先程ご覧いただいた通り、IPアドレスとドメインは紐づけされたままなのでサイトは簡単に
復活することが可能な状態です。
まとめ
差出人のメールアドレスは確かにオリコカードのものでしたが、そこで騙されててはいけません。
偽装をしっかり確かめることで被害を防ぎます。
自分の身は自分自身で守ってください!
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |