件名と本文が乖離しすぎ
今年ももう5月の中旬も過ぎ当地では毎日爽やかで快適な日々が続いています。
その爽やかな日々に対して、今朝もたくさんの悪質なメールが届いております。
その中の一つがこの「日本年金機構」に成りすましたフィッシング詐欺メール。
厚生労働省の運営業務を担う非公務員型の特殊法人を騙った不届き者です。
少々日本語がおバカで伝わりにくいこのメールもプロパティーから見ていきましょう。
件名は
「[spam] nenkin-netアカウントのアップグレードとメンテナンス」
「アカウントのアップグレード」って文句がすごくそれらしくて少しばかり笑えてきます。
それに、この件名と本文の内容が乖離しすぎ、本文のどこにアップグレードの話があるのでしょうか?
この件名には”[spam]”とスタンプが付けられているので迷惑メールの類です。
このスタンプはスパムスタンプと呼ばれるサーバーからの注意喚起で、これが付いている
ものは全て迷惑メールと判断されたもの。
うちのサーバーの場合注意喚起だけですが、例えばGoogleのGmailサーバーの場合だと
否応なしに「迷惑メール」フォルダーに勝手に保存されるような仕組みもあります。
差出人は
「年金事務所 <idpass-net.nenkin.go.jp-update@mvotcp.top>」
「日本年金機構」さんには、れっきとした”nenkin.go.jp”ってドメインをお持ちです。
それなのにこのような”mvotcp.top”なんて全く関連性の無いドメインを使った
メールアドレスで国民にメールを送るなんて絶対にあり得ません!
それに、このメールアドレスだって、本当にこの差出人のものかどうか。
その辺りも含め、次項でしっかり見定めていきましょう!
やっぱり”mvotcp.top”も嘘だった
では、このメールのヘッダーソースを確認し調査してみます。
ソースから抜き出した「フィールド御三家」がこちらです。
Return-Path: 「idpass-net.nenkin.go.jp-update@mvotcp.top」
”Return-Path”は、このメールが何らかの障害で不達に終わった際に返信される
メールアドレスです。
一般的には、差出人と同じメールアドレスが記載されますが、ここは誰でも簡単に
偽装可能なフィールドなのであてにできません。
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Message-ID:「20220518022856454650@mvotcp.top」
”Message-ID”は、そのメールに与えられた固有の識別因子。
このIDは世の中に1つしかありません。
”@”以降は、メールアドレスと同じドメインか若しくはデバイス名が入ります。
ここも偽装可能で鵜呑みにはできません。
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Received:「from yahoo2.com.cn (unknown [167.179.80.76])」
あれれ?”yahoo2.com.cn”??
ドメイン”mvotcp.top”じゃなかったっけ?
”Received”は、このメールが通過してきた各受送信サーバーが自身で刻む
自局のホスト情報です。
ここに掲げた”Received”はこのメールが最初に通過したサーバーのもの。
すなわち、差出人が使った送信サーバーの自局情報。
記載されている末尾の数字は、そのサーバーのIPアドレスになります。
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まずは、”mvotcp.top”について情報を取得してみます。
このドメインを割当てているIPアドレスが”Received”に記載されているものと同じなら
差出人のメールアドレスだと認めますが、そうでない場合、特定電子メール法違反となり
処罰の対象とされます。
※特定電子メール法違反
・個人の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・法人の場合、行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下の罰金
さて、どう出るのでしょうか?
ほらほら”117.50.182.244”がこのドメインを割当てているIPアドレス。
でも”Received”に書かれているのが”167.179.80.76”ですから全く異なるので、この方はやはり
アドレス偽装。
しっかり罪を償っていただきましょう!
”Received”のIPアドレス”167.179.80.76”は、差出人が利用しているメールサーバーのもの。
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
ピンが立てられたのは、フィッシング詐欺メールの一大生産地の北京にある「天安門広場東側」付近です。
このメールは、この付近に設置されたメールサーバーを介して私に届けられたようです。
リンクもしっかりと偽装されてて
では引き続き本文。
nenkin-netを定期的にご利用いただきありがとうございます
あなたの国民年金口座は完全に支払われておらず、国民年金口座は停止されています。
年金サービスのホームページに登録して確認してください。
お客様の状況に応じて手続きの流れを紹介します。
他の方法で支払う場合は、マニュアルに従ってアカウントを再アクティブにします。
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人はみな国民年金に加入しなければならない。
このメールを受け取ってから24時間以内に処理してください。
所定時間内に処理しないとアカウントがキャンセルされる可能性があります。 |
「あなたの国民年金口座は完全に支払われておらず」って日本語として不思議な表現ですね。
「口座が完全に支払われておらず」口座って支払うものなのでしょうか?
口座に支払うんですよね?
他にもちょいちょい突っ込みどころもありますが…
日本語ってむずかしいですよね…(笑)
このメールは、フィッシング詐欺メールなので詐欺サイトへのリンクが付けられています。
そのリンクは、本文に直書きされていて、リンク先のURLがこちらです。
おお?今度はメールアドレスと違ってちゃんと”nenkin.go.jp”って「日本年金機構」さんの
正規ドメイン使われているじゃん!
っと思ったら大間違い!
リンクをクリックしてみると…
「不適当なリンクが検出されました」って警告が!
裏でしっかり偽装されていて実際にリンクされるのはこのURL
このサイトの危険性をトレンドマイクロの「サイトセーフティーセンター」で確認してみます。
おっと、どうやらまだ新種のようでまだ「未評価」とされています。
このようなフィッシング詐欺サイトがこの評価ではあまりにも危険すぎます。
評価を変更していただけるよう早速申請しておきます。
このURLで使われているドメインは、サブドメインを含め”www3.ipass-net.nenkim.kunnep.top”
このドメインにまつわる情報を取得してみます。
申請者は、中国福建省の方。
それ以外のほとんどの情報は、プライバシー保護でマスクされています。
このドメインを割当てているIPアドレスは”104.223.15.115”
このIPアドレスを元にその割り当て地を確認してみます。
ピンが立てられのは、詐欺サイトのメッカであるロサンゼルス近郊のリトルトーキョーに程近い場所。
この辺りに設置されたウェブサーバーに、リンク先の詐欺サイトは構築されているようです。
安全な方法でリンク先の詐欺サイトに調査目的で訪れてみました。
開いたのは、「ねんきんネット ログイン」と書かれたページ。
「ねんきんネット」は、インターネットを通じてご自身の年金の情報を手軽に確認できるサービス。
どうやらこれは、そのログインページを模した詐欺サイトです。
絶対にログインしないでくださいよ!
まとめ
先日も「日本年金機構」さんを騙ったフィッシング詐欺メールをご紹介したばかりなのに
今度は手口を少し変えて再びですか。
こりゃ「えきねっと」さんの時と同様に爆発的に増えるかもしれませんね!
暫くは要注意ですよ!!
いつものことながら、誤字・脱字・意味不明がありましたらお許しください(^-^; |