不正アクセスによる個人情報漏えいが相次ぐ原因は?2026年10月の事案一覧と現状【特集①】

【特集①】不正アクセスによる個人情報漏えいが相次ぐ原因と現状|2026年10月の事案を整理する

Heartland-Lab (ハートランド・ラボ) 専門調査レポート|2026年10月16日時点

2026年10月に公表された大規模な個人情報漏えいについて、各社の発表や報道をもとに、「いつ」「どこから」「何が」漏れたのかを整理しました。特集の第1回にあたるこのページでは、原因と現状に絞って解説します。

緊急性レベル ★★★★★ (5/5)
被害の広がり ★★★★★ (5/5)
原因の解明状況 ★★☆☆☆ (2/5) ※侵入経路が非公表・調査中の事案が多いため

※調査が進むと内容が変わります。このページは随時更新します(最終更新:2026年10月16日)。特集の全体像は親ページをご覧ください。

こんにちは、Heartland-Labです。金曜日の朝、ニュースを開くたびに、また別の会社の名前が「情報漏えいの可能性」として並んでいる。そんな1週間ではなかったでしょうか。

件数の大きさに目が行きがちですが、本当に知っておきたいのは「なぜ、こんなに立て続けに起きているのか」です。公表された事実を一つずつ並べていくと、見えてくることがあります。

先に結論:この記事のポイント

  1. 公表は10月に集中しましたが、侵入そのものは9月から始まっていた事案が複数あります。「同じ日に一斉に攻撃された」というより、「発覚と公表が重なった」と見るほうが事実に近そうです。
  2. 入口は大きく3種類です。①クラウド基盤そのものへの攻撃、②委託先や外部サービスを経由した侵入、③各社の会員管理システムやAPI(システム同士の窓口)への侵入です。
  3. 侵入経路が公表されていない事案が多く、調査中のものがほとんどです。分かっていないことは、分かっていないと書きます。

事案の一覧(入口の種類で分けて整理)

各社の発表や報道を確認できた範囲で整理しました。件数は「漏えいの可能性がある数」で、単位や数え方が事案ごとに違うため、足し算はしていません。

A. クラウド基盤への攻撃

公表日 事案 規模・漏えいのおそれがある情報 判明している経緯
10月7〜8日 IDCFクラウド(IDCフロンティア) 495の企業・自治体に影響。「Movable Type クラウド版」の31サーバーなど、載せていたサービスが停止 東日本第1リージョンがランサムウェア攻撃を受けた。10月7日午前3時40分ごろ障害が発生し、被害拡大を防ぐため該当リージョンをネットワークから切り離した
10月9日 JR東日本「えきねっと」「大人の休日倶楽部」 約206万件の可能性 IDCFクラウドへの攻撃の影響と報じられた
報道あり JR九州 Web会員 メールアドレス最大約130万件の可能性 同じくIDCFクラウドへの攻撃の影響と報じられた

ここでの特徴は、被害にあった会社が自社の守りを破られたのではなく、「借りていた土台」が攻撃された点です。土台を借りていた多数の会社が、同時に巻き込まれました。

B. 委託先・外部サービス経由

問い合わせ対応システム「i-ask」を運営するスカラコミュニケーションズが10月6日に公表した不正アクセスでは、少なくとも5社の問い合わせ情報が影響を受けたと報じられています。漏えいのおそれがある問い合わせ情報は、最大で713,126件(問い合わせ単位の数えで、同じ人が複数回問い合わせた分も含む)とされています。

公表日 事案 規模・漏えいのおそれがある情報 判明している経緯
10月5日 大和証券 約11万人。氏名、メールアドレス、証券口座の番号 インターネットでの問い合わせを受ける外部システム
10月6日 シチズン時計 約10万人。氏名、住所、電話番号、メールアドレス。問い合わせ欄に書かれた銀行・カード情報が含まれる可能性も 3つの時計ブランドサイトの問い合わせフォームの外部システム
10月7日 損保ジャパン 延べ約6万件。連絡先、勤務先、ドライバーID、運転アラート情報など 法人向けドライブレコーダー関連の問い合わせ用の外部システム
10月7日 東武鉄道 件数・項目は確認できた記事に記載なし お客さまセンターの問い合わせフォームの外部システム
10月8日 オリックス生命 約2万6500件。氏名、生年月日、住所、電話、メール、証券番号、問い合わせ内容(病歴などが含まれる可能性) 公式サイトの問い合わせ用の外部システム
10月8日 第一興商(「ビッグエコー」など) 利用者情報約872万4000件のおそれ。氏名、性別、生年月日、メールアドレス、電話番号。パスワードは含まれない。ほかに従業員情報約9万3000件 委託先の日本コロムビアグループで、従業員が使う端末1台がマルウェアに感染(10月1〜2日に判明)。実際の漏えいや不正利用は確認されていないとされる

※i-askの5社は、各社の発表の中でサービス名や委託先名を明らかにしておらず、報道が公表内容の一致から同じ委託先と結びつけたものです。第一興商は、記事中の内訳を合計すると約863万1000件になり、公表数字と差があると指摘されています。

ここでも特徴は同じです。利用者から見ると「問い合わせをしただけ」「カラオケに行っただけ」の会社が、裏で情報を預けていた別の会社から漏れた形になっています。

C. 各社の会員管理システム・APIへの侵入

公表日 事案 規模・漏えいのおそれがある情報 判明している経緯
10月5日 「焼肉きんぐ」公式アプリ(物語コーポレーション) 1078万8963件(登録者のほぼ全件)。会員番号、氏名、メールアドレス、電話番号。ログインパスワード、生年月日、決済情報などは対象外 10月2日に不正アクセスを確認、3日に流出が判明。侵入経路は未公表
10月8日 ローソン ローソンID 215万5345件(メールアドレス、氏名、性別、電話番号、住所、メルマガ取得情報)。アプリ予約は26件で、氏名、電話番号、クレジットカード番号の一部 ローソンIDは9月12〜14日、アプリ予約は9月17日に不正アクセスがあり、10月7日の調査で判明。アプリ関連システムの不正利用が原因と推測されている
10月9日 skyticket(アドベンチャー) 3件の不正アクセスを公表。最大の1件は約1464万件で、氏名、生年月日、メールアドレス、電話番号、住所、振込時の依頼人名義。ログインパスワード約413万件分も含まれ、ハッシュ化されているが解読のおそれがある。パスポート番号の流出はなし 最大の1件は、管理機能の悪用から別のサーバーやクラウド上のデータに到達(10月2〜4日、5日に発見)。ほかに、業務管理システムの脆弱性(9月20日)で約1万7780件(返金先の口座情報を含む)、バス予約完了ページがログインなしで見えた件(8月3日〜10月1日)で約1.2万件
10月9日 ブックオフ 最大約643万件。氏名、生年月日、メールアドレス、電話番号、住所、ポイントカード番号、会員番号。クレジットカード情報は対象外 子会社の会員管理システムに10月6日に不正アクセスを確認。調査で情報が外部に持ち出されたと判明。悪用は未確認
10月15日 ソースネクスト 22,519,960件(同社の通知メールより)。メールアドレス、パスワード、氏名、住所、電話番号、生年月日、会社名・役職名・部署名など。クレジットカード情報は対象外 会員情報を取得するAPIが不正に使われた。10月9日10時ごろから侵入され、13日9時ごろに確認、同日中に封じ込め。15日に個人情報保護委員会へ報告し、16日に警察へ被害申告の予定

※ソースネクストは、報道での確認ができていないため、同社が会員に送った通知メールの内容に基づいています。

D. 10月より前に検知されていた事案

公表日 事案 規模・漏えいのおそれがある情報 判明している経緯
9月25日・28日 タイムズカー 約660万件(退会済みの人を含む)。氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス、運転免許証の情報と画像、ハッシュ化したパスワードなど。クレジットカード情報は対象外 9月25日午前9時7分に不正アクセスを検知し、26日朝までに遮断。侵入経路は未公表
10月2日 第一生命保険・第一ライフグループ 約12万名分の可能性(退職者約7万名を含む)。従業員番号、氏名、住所、電話番号、所属、職位など。顧客情報への不正アクセスは確認されていない 従業員向け人事システムへの不正アクセスを9月24日に検知

なぜ10月に集中して見えるのか

公式に理由が説明されているわけではありません。ここでは、公表された日付から読み取れることを整理します。

① 侵入と発覚の間に時間差がある

  • ローソンIDは9月12〜14日に侵入され、判明したのは10月7日です。侵入から発覚まで3週間以上かかったことになります。
  • skyticketのバス予約ページの件は、8月3日から10月1日まで、約2か月間、ログインなしで予約情報が見える状態でした。
  • ソースネクストは、10月9日に侵入されて13日に確認と、約4日かかっています。

つまり、10月に「一斉に攻撃が始まった」というより、9月以前から続いていた侵入が、10月にまとめて発覚・公表されたと見るほうが、確認できる事実に合っています。なお、同時期に複数社が狙われている点には変わりがなく、背景の説明は下の「専門機関の見方」で触れます。

② 古い情報や、使っていない会員の情報が残っていた

タイムズカーの約660万件には、退会済みの人の情報も含まれていました。個人情報保護委員会も、不要になった個人データは遅れずに消すよう、改めて求めています。使わなくなった会員情報が残っていること自体が、被害を広げる一因になっています。

③ 入口が「人」ではなく「システム同士の窓口」になっている

ソースネクストの通知には、会員情報を取得するAPIが不正に使われたとあります。skyticketも、管理機能を悪用されたことが入口でした。次の専門機関の見方とも重なる部分があります。

💡ここで! 「API」とは?

アプリやサービス同士が、情報をやり取りするための「窓口」のことです。たとえば、スマホアプリが会員情報を表示するときに、裏でこの窓口を通して会社のシステムに問い合わせています。この窓口の守りが甘いと、アプリを通さずに、窓口へ直接アクセスして情報を引き出されるおそれがあります。

💡ここで! 「ハッシュ化」とは?

パスワードを、元の文字が分からない形に変換して保管する方法です。盗まれてもすぐには読めませんが、「よくあるパスワード」や「短いパスワード」は、変換後の文字列から割り出されてしまうことがあります。skyticketが「解読されるおそれ」と書いているのは、このためです。

専門機関の見方:JPCERT/CC と AIの可能性

JPCERT/CC(日本のサイバー攻撃対応の専門機関)は、相次ぐ不正アクセスについて、寄せられた情報から見えた攻撃の傾向を公表しています。報道によると、主な傾向は次の4つです。

  • 既知の弱点の総当たり探し:特定のソフトの弱点だけを狙うのではなく、標的ごとに、すでに知られている複数の弱点が残っていないかを探り、見つかったものを悪用する。
  • APIの悪用:公開されているスマホアプリを解析してAPIの場所や鍵を見つけ出し、画面からは操作できない非公開のAPIを直接たたく。別のシステムから盗まれた鍵が使い回される例もある。
  • データ分析ツール「Metabase」の弱点:データベースへの不正な命令(SQLインジェクション)を許す弱点が狙われている。JPCERT/CCは8月にも注意喚起を出している。
  • Webシェルの設置:公開サーバーの奥にあるサーバーに、遠隔操作用のプログラムを置かれる例が確認されている。

対策としては、短時間の大量アクセスを制限する、非公開APIも含めてアクセス制御を行う、鍵に有効期限をつける、不要になったデータを消す、といった内容が示されています。

また、あるセキュリティ会社は、攻撃の通信を解析したところ、人間には難しい速さで多様な手法が試されていたとして、AIエージェント(AIが自分で判断して作業するしくみ)が悪用されている可能性を指摘しています。ただし、この指摘は可能性の段階です。個別の事案でAIの利用が確認されたという情報は、確認できた範囲ではありません。

※JPCERT/CC公式ページは読み込めなかったため、報道(ScanNetSecurity、NHK)の内容に基づいています。

国の動き

  • 10月7日:個人情報保護委員会が、大規模な漏えいを受けた注意喚起を公表。大量の個人情報や、詐欺に使われやすい情報を持つ事業者に、安全管理措置の見直しを促しました。技術面の見直し案として、多要素認証、ログの保管と監視、被害拡大を止める仕組み、アクセス権限の最小化などが示され、確定は2027年4月の予定です。使い終えた個人データの消去も求めています。
  • 10月8日:政府が関係省庁会議を開催。
  • 10月9日:政府が、大量の個人情報を扱う事業者に、システムの弱点への速やかな対策などを要請。同日、自民党の会合でも、政府にサイバーセキュリティー対策の強化を求める意見が相次ぎました。

現時点で分かっていないこと

正直に書くと、侵入経路や原因が公表されていない事案が多いのが現状です。焼肉きんぐやタイムズカーのように、経路が未公表のまま調査が続いているものがあります。

  • 複数の事案が、同じ攻撃者によるものかどうか
  • AIがどこまで関わっているのか
  • 盗まれた情報が、今後どこで、どう使われるのか

悪用が確認された例は、今のところ限られています。skyticketでは、不正にログインされたアカウントが1件確認されたと発表されています。GMOリサーチ&AIの「infoQ」では、不正なポイント交換が報じられました。一方、ブックオフや第一興商では、悪用は確認されていないとされています。ただし「確認されていない」は「起きない」という意味ではありません。次のページでは、流出した情報の種類ごとに、これから起こりうる事態を考えます。

本レポートの結論

今回の一連の漏えいは、クラウド基盤、委託先、各社のAPIや管理機能と、入口がばらばらで、侵入から発覚までに時間がかかった事案も目立ちます。10月に集中したのは「発覚と公表」で、侵入は9月以前から始まっていたものが多いと見られます。原因の全体像はまだ分かっていません。身近な人が騙されてからでは手遅れです。このページのURLをコピーして、家族のLINEグループで『これ気をつけて!』と共有してあげてください。

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Data Provided by Heartland-Lab Security Research Unit
参考:各社の発表、および以下の報道・公的機関の資料(2026年10月16日時点)
個人情報保護委員会(注意喚起) ScanNetSecurity(JPCERT/CC) Impress Watch(IDCFクラウド) @IT(i-ask) @IT(skyticket) ScanNetSecurity(ローソン) INTERNET Watch(第一興商) ビジネス+IT(焼肉きんぐ) 熊本日日新聞(ブックオフ) @IT(タイムズカー) Innovatopia(第一生命・第一ライフ) NHK(AI悪用の可能性) NHK(政府の要請) 共同通信(関係省庁会議)

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